HiSilicon Kirin 980のスペックは凄いのか?

9月1日にHUAWEIがKirin 980のおおよそのスペックの一端(全てではない)について公開した。Snapdragon 845を遙かに凌ぐ性能らしいが、実際にはGPUのFP32性能(Mali-G76の推定クラスタ数10)は480GFlops程度なので、メモリーなどの帯域幅と容量で差別化することと、ベンチマーク最適化、ディスプレイ最適化(解像度など)があるのだと思われる。

CPUだけでも、Dhrystone 及びWhetstone Benchmarkだけ使われるともう少し正確な数字になるが、antutuなどの製品になるとどうしてもターゲット最適化がバージョンアップによって行われるので、純粋性能が量りにくいという難しさがある。まあ、独自の命令セットを追加している事業者が多いので、計れないというのもあるので難しい。
アプリケーションで考えると、この手の最適化ベンチマークと同じ水準で最適化すればそれ相当の性能(最大性能)が出るという見方をしなければいけないという点に注意が必要だ。

業界標準(スマホだとSnapdragon)の場合は、当初から最適化されているが、それに挑む側はベンチマークで数値が良くても、アプリケーションレベルでは普及が進むまで劣りやすいというのが、厳しいところだ。


以下がスペック表になるSDM845等との比較も入れているが、この数字は暫定である。
画像



表から言えるのは、CPUの性能が格段にアップしたこと、GPUはSnapdragon 710を大きく上回る。この性能はSnapdragon 820と互角である。ただ、メモリー帯域が広いため、ゲーミングなどでは820を上回り、821クラスを超えるかもしれない。

UFSのサポートは、3.0としているが実際にそうだという情報は得られなかったので、暫定である。
尚、LTEモデムはダウンロード側がLTE Cat.21になり、L1 Down Linkが1348Mbpsへと上がっている。ちなみに、1348Mbpsでリンクアップして最高性能が出たと仮定した場合で、2層のBlu-ray Discに相当するデータをダウンロードしたとしよう。要はソフトバンクの50GBプランの容量を使い切るのに掛かる時間を考えると、
1348Mbpsは毎秒168.5MBの速度となる。これは凡そ300秒(5分)掛からないぐらいで使い切る計算である。

まあ、実際にはダウンリンクを確立するために、アップリンクで帯域要求と制御確認をするので、もう少し短くなる可能性もある。たぶん普通のユーザーから見れば、一体何のために、モデムがスピードアップしているのかはもう分からないだろう。(実際には遅延削減や繋がりやすさなどの効果はあるが、対応設備が基地局になければ効果はない。)


といった具合である。HUAWEIは845を上回ると自画自賛しているが、UFS3.0(を搭載しているかは分からないが多分載せていると私は見ている)とメモリー帯域を含めた総合性能で上回っていると見るのが妥当だろう。
ただ、GPU側は明らかに劣っていると考えられる。それが、845を上回るとすれば比較対象の845搭載機種のディスプレイ解像度や、アプリケーション仕様とこれから投入する機種のディスプレイ解像度やアプリケーション仕様に何らかの差があるのだろう。

技術的に独自開発でもQualcommが製造開発しているAdreno GPUを上回るのは難しい。このAdrenoはAMDからQualcommがIPを買い取って作った製品であり、他社より開発リソースが1から2世代先にあるからだ。Appleでさえも、アプリケーション(iOS)による隠蔽が出来ていなければ、Adrenoより性能が下回っているのは明確だろう。

これがQualcommにとっては唯一の救いである。

ただ、今回最強を誇っていたCPU部は追いつかれた可能性が高い。A76とA75は大方、QualcommのKryo 300とほぼ同等の性能だろう。Qualcommにとっては一角が完全に崩れたことになる。まあ、これは予想されていたことでだからこそ、Qualcommは早い段階からSnapdragon 6x0世代等にKryoを解禁したと考えられる。

もう一つ問題なのは、Qualcommが劣っていると思わせるのに十分なNPUをKirinでは積極的にアピールしている点だろう。実際にはQualcommもHexagon DSPでNPE命令とVector命令で同等程度に補っているが、今回NPUはDual化された。7nm(Intel水準で10nm)の微細化効果だろう。

ここには、Snapdragon 855(Snapdragon 8150という話もある)でQualcommが対抗するようなので、どこまでQualcommが意地を見せるか?これから火花が散ることになりそうだ。

といったところである。まあ、P20 Proの評判もあり、次を待つ人も多いが、GPUは無理としても期待に相応しい性能ではあると言えよう。ただ、Cortex-A76、7nmでも熱そうな気もするが……製品が出たらわかるだろう。


<現実には厳しいHUAWEIにとってのSoCは貴重>

プロセッサでは順調に成長し、国内のスマホ市場ではドコモにP20 Proを提供するなど、ガンガン進んでいるHUAWEIだが、実際の足下の印象は低下傾向にある。日本は別として……。

現在、豪州(オーストラリア)では基幹ネットワークの入札参加が禁止された。欧州でもその流れが再び強まっており、米国では完全に閉め出す勢いとなっている。だからこそ、当初は全く眼中にもなく、海を渡っていた中国陣営が、日本市場でのCMを加速させはじめた訳で、広告も急速に増えているのは、その影響でもある。

即ち、日本で好調になるのは、国際関係など政治的な影響もある訳だ。そして、Kirin 980はその厳しい状況を変える切り札でもある。要は、もしもHUAWEIが米国でZTEのように取引停止を勧告されても、少なくともSnapdragonを必要とすることはないため、独自OSでも積めば何とか売り続けることが出来る可能性がある。

それが、Kirinが破竹の勢いで進化している理由でもある。GPUの独自化も噂されているほどだ。
まあ、それだけ中国ベンダーが技術を蓄えていると言うことである。


さて、来年はKirin 990になると思われる。次に目指すのはGPUを独自にしてFP32性能を隠蔽するという手段が考えられるが、果たしてやるかどうか?見物である一方で、怖さも感じるのは検閲による引き締めも年々強めている国だからである。日本も似たようなものになりつつある気もするが……















"HiSilicon Kirin 980のスペックは凄いのか?" へのコメントを書く

お名前[必須入力]
ホームページアドレス
コメント[必須入力]
認証コード:[必須入力]

※画像の中の文字を半角で入力してください。