富岳が4期連続でスパコンランキング4冠 …… No1が頻繁に記事になるのは日本ぐらいでは?

PC Watchと時事通信社の記事である。


HPC(High Performance Computing)は、Intel Auroraなどが遅れていることもあって、日本がトップに君臨しているが……この5年ほどは殆ど各国投資をしなくなったのに日本は投資し続けたから出ているある種、時代遅れの結果である。もう少し分かり易く言えば、HPC自体が既に商用のクラウドコンピューティングによってビジネスに置き換わり始めたのだ。
簡単に言えば、官業ではなく産業になったのだ。産業になると、そもそも競争の狙いが1ユニットで超高速な馬鹿みたいに高い商品よりも、そこそこを並列で必要とされる量だけ繋ぐに変わって行く、それが現実である。

ちなみに、先端技術で競っている米国や中国では既にノイマンコンピュータよりも量子コンピューティングとノイマンの併用研究の方が盛んである。ノイマンで桁外れの金額を入れて超高速に処理するより、量子演算の手法研究を急いだ方が、次のリーダーに成れる可能性が高いからだ。ここには欧州も投資している。

日本が高齢化社会で頭が古い1位に拘り続けて数十年……2位でも3位でも上を目指すことは大事だが、死守することだけを考えるようになったら終わりである。まあ、死守が出来なくなるのも時間の問題だろう。この国は本当にハイテク産業やシステム投資の在り方を政府や官庁が分かっていない。いわゆるマイナンバーカードで何でも1枚で出来るでは無く情報が漏れず分散され難読であることが大事で、情報の一元化より価値ある情報を生み出せるかどうかとセキュリティが重要だという頭も日本にはもうない。


<不況や衰退期にはNo1の記事が増えてきたのも原因>

ちなみに、一定の衰退期になるとNo1を獲得したという記事が増えるのはどの社会でも見られる傾向である。日本はもうかれこれ30年以上そういう記事が増えてきているが、これは一種の国威発揚を促す雰囲気であり、上への不満を抑え政治や経済発展はしていると思わせるための手段でもある。国民栄誉賞とか、都道府県民栄誉賞が簡単に出てくるのもその辺りが関係する。ちなみに、これらの授与には税金が使われるので、本来その自治体や国に属していない人には出してはいけないのだが、今では市民や県民への栄誉賞を乱発している自治体もある。それを、喜ばしいと報道してポジティブに住民が反応する辺りが、日本人は素直というか馬鹿である。
国によっては、それでデモなどが起きる地域もあるだろう。


<コンピュータ産業は事実上死滅し官業に>

スーパーコンピュータはどうなのかというと、単純に民主党政権時代の対比として政府や報道が使っているだけなのだろう。たまたま、それが当たって今まで続いたという感じだ。しかし、京の頃からそうだが、実は京の辺りから米国と中国も当初の声に比べて勢いを強めてはいなかった。理由は、とても単純でシミュレーションの一部は、ワークステーションや小規模な分析サーバーでも出来るようになったからだ。


大規模汎用コンピュータでは1つのシミュレーションで大規模な考慮をした演算を短時間に終了させることが可能だが、逆に言えばその規模を全て1つの処理で使い切るのは難しい。考慮を複雑にすればするほど、シミュレーション設定上の矛盾(バグ)や考慮不足も増えるため、思わぬ結果(失敗)が出ることもある。これが、気象専用など役割を与えられたコンピュータなら、何十年と考慮を重ねた専用のミドルが設計されているが、単発の汎用分析や検証といったシミュレーター処理の場合は複雑な考慮を行う程、思わぬミスも増えるのだ。

だから、近年はブロックを分散して行いその結果毎に新しい分析を繋いで行く場合も多い。その場合だと、実は極端に大型な並列ノードを使う必要はなくなる。即ち、大きいことが良いことではなく、そこそこで十分と言うことになる訳だ。まあ、もちろん大きな処理が最終的に求められる事があるため、スーパーコンピュータレスで良いとは言わないが、小規模の仮検証を何度か先に他のコンピュータで行った後で、本検証に移るのが妥当であり、そういう使い方だと、ユニットコストと運用コストを両方考慮すると、実はそんなに凄まじい性能のコンピュータシステムを持つ必要が無くなってくるのだ。

小型のHPCを研究部署毎に持たせた方が実際には効率的であるし、研究がそれほど多くないなら、AmazonやGoogle、MSなどのクラウドで時間や処理性能割でリソースを借りるサービスの方が安い。


日本の数ヶ月前までのコロナ渦のように、感染検証に富岳使うとか普通はしない。あの程度のリアルタイムシミュレーションで前後数名の人間だけなら、富岳で無くとも、NVIDIA Quadro RTX 8000やそれ以下のシステムでも出来たかもしれない。ただ、民衆の大半はそれを知らないから、それが凄いことのように思い込むそれを政治に利用されているのが、富岳ななってしまったわけだ。

そして、そういう上の思惑のための利用によって産業の遅れが加速するのである。何故なら、まだ富岳は最先端だと思っている人が増えるからだ。実際は、富岳は既に最先端では無い。ただ高速で省電力でも、ビジネスとしてみると富士通のHPCシェアは世界の5本の指どころか、10本の指どころか、15本の指にも入らないはずだ。何せ、投資規模が他のHPCの2倍~10倍なんだから。電気代が安い……って、投資が1200億円で電気代が3億/月として、海外では投資が500億円で、電気代が5億/月ではどっちが安いか考えると良い。そこを測らないから、日本のコンピュータが売れないのである。

即ち、No1の性能、処理効率などをベンチマーク上では示したが、買う側から見て金額は1.5倍~2倍するコンピュータなど買わないということである。例え省エネでも、100年でやっとペイするとか言われて買うか?と言われて買う人はいないだろう。性能で勝ってもビジネスで負ける訳だ。

それでも、それを目標にして開発しているからある意味では希有な国であり、これを捨てれば本当に日本は何も無くなるかもしれない。ただ、日本が昔この手の技術でリード出来ていたのは、それを政治パフォーマンスやNo1という言い訳には使わず、製品としての価値にちゃんと昇華していたからだ。はっきり言うが性能など2位でもよい。1位であるべきは、世界に売るときの「魅力」である。この国は、過去の栄光のあまり、古い成功に至った栄光に縋り続けている訳だ。

HPCでNo1になるなら、今必要なのは、お買い得でコンパクトで、設計しやすいことだろう。
後は、最初からクラウド向けに販売するというのも大事だが、今の日本は官業としての販売が中心であり……難しいだろう。日本企業ですら、日本のHPCを買わなくなってきているのだから。


<報道も変わるべき>

No1というのは良い響きだ。今は社会もあまり良い話がないので、安易にNo1に飛び付くのだろう。結婚報道とか……
しかし、そういう栄光にへばりついていて、次に幸せが来ることは無い。大事なのは、No1だったこと、今No1なことではなく、これから社会をリードとは言わなくても、安定させることにあるからだ。

今のままでも取りあえずこれからも何とかなると、日本人が思い続ければ、この先それが続くことはないだろう。絶対に急激な荒廃が始まる。その前に、報道機関もこれらのNo1の扱い方を改めるべきだろう。凄いというイメージで伝えず、4期連続ならもう当たり前なのだから、さっと終わらせれば良い。

必要なのは、これからまた抜かれたら富岳と同じようなものの発展をまた官製で作るのか?それとも、この技術を活かして、それとは別に向かって商業で成功を治めるのか?それとも、国費まで投じたのにもう古いと撤退して全て海外にでも売り捌くのか?そこが大事だ。米国は官製で売る物を民間にも転用し、コンシューマ市場にも派生が出回っている。日本はいつまで、技術は最先端。値段も世界最悪。高速大容量だけど、海外では鳴かず飛ばず。いつしかその技術の一部を他の海外メーカーが良いところだけ、ライセンス契約して利用する程度の小銭稼ぎをするも、投じた税には及ばない利益……という状況を続けるのか?そして、それを囃し立てたくせに、社会が無反応や批判に転じると、報道も予算が無駄とそのうち言いだして、切り捨てが始まるだろう。

そこが日本の癌である。これは、報道機関の関係者(取材する人)が、全く自分が取材する対象に対して勉強しないからである。だから、自分が書いている記事が一体どういう影響を社会に与えているのか、その技術が本当に世界で称賛されるほどの物なのかも分からず、結果的に社会から飽きられた頃に、社会の批判を浴びて同調せざる終えなくなり、落ちていくのだ。

それを報道がまず理解して学ぶことが大事である。そうしなければ、この国の立たされている深刻な状況は伝わらず、変化も起きず優しい衰退から、突然の凋落、そして後悔に陥る恐れもある。

この手の世界1位を見ると以下ダウンタウンのコントを思う。

以下のコントは、笑えるネタだ。だが、このコントと同じことを、現実の社会で行い、No1であることだけを評価するような国になると、笑えない話になる。そして、実はそれが今の日本を蝕んでいる恐れもある。


世界1位はどんな形でも成れる可能性はある。個人であれば、誰もやったことがない何かをすれば、ギネスブックに認定される可能性があり、世界1位になることは出来るからだ。しかし、その1位が本当に社会から見て、または世界から見て価値ある物とは限らない。世界一位になることは、ある意味では意外と簡単である。何か、人がやっていないことをやり続ければ良いのだから。そのやり続けることが難しいとも言えるが、それが目標で絶対にNo1になるぞと思っているなら、出来ないことではない。

問題は、それを全員に伝えて凄いと囃し立てることことで、社会のためになるほどの偉業になるかという点だ。本当に社会の多くが幸せになる道具のNo1は、そうそう同じ物で長く維持することは出来ないのが普通だ。それをまず、理解することから未来を考える力は生まれる。



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