台湾TSMC、日本工場に8000億円 ソニー570億円出資 …… この国は半導体という言葉だけで国が金を出す。

日本経済新聞社の記事である。


プロセスノード22nmというのは、x86で言えば、Ivy Bridge/Haswell(2012~2014年)世代の技術である。28nmというのは、スマホで言えばSnapdragon 800/801及びApple A7(28nm)~A8(20nm)の頃でありこれまた2013年~14年頃である。今でもこのクラスの半導体は大量に使われているが、競争力がある半導体かというと、サブライン製造に移り始めており、価格アドバンテージが下がってきている世代である。

現在先端として置き換わりつつある1x/1zと呼ばれる10nm世代ならともかく、10年前の世代を大規模に工場から新設するのはどうかと思うが……多分、日本企業のトップや政府はこの半導体のプロセスノードがどれほどの重要性を持っているのかを甘く見ているのだろう。普通に考えるなら、金を国が出すなら、600mm/800mmというまだ量産出来ていないウェハー研究が出来るぐらいで10nm世代を入れるなら予算を付けるのが妥当である。

欧州ではTSMCやSamsungなどとそういう協議をしている。流石に最先端は台湾にとっての命綱であり引き出せるかは分からないが……


<何故、何でも良いとは言わない我々のような人が居るのか?>

というのを一応書いておくと、ハッキリ言って半導体は、22nm⇒14nmだけで、3倍の集積回路を同じ電力消費量で載せられるからだ。しかも、今の先端lリソグラフィー技術を使えば、歩留まりの問題もなく、熱や光、温度といった耐候性も自動車などで使うには申し分ない物が作れる程になっているため、下手にこの世代で日本の自動車や部品に使うと海外との競争に負ける恐れがある。

何せ半導体は同じ歩留率なら小さくなるほどコンパクトに大量に製造できるため、価格競争力が増すからだ。同じサイズだと性能も増す。

日本だけでチープなものを高く売るなら良いが、海外メーカーから日本に輸入されてくる製品は、その3倍の性能の電装品を車載システムに載せているなんてことになったらどうなるか?自動車産業は、まだそんな状況になり得ないと言っている間に、食われるだろう。そうやって、家電業界は10年で衰退したのが日本の過去だ。


だから、国を金を出すと決めたなら、20nmよりもうワンステージ進んだ14/16nmまたは10/12nmや7nm(ELUV)にレベルアップさせるように求めるべきだったのだ。もう手遅れだが……TSMCの7nmでも既に先端ではない。同じ7nmでArfLとELUVがあるのだが、前者と後者でのノード差が10%(性能、電力の両面で合わせて30%ぐらい)ある。

ちなみに、自動車のAIや自動走行に使われることもある汎用GPU、NVIDIA A100 Tensorは、TSMCの7nm FinFETで製造されている。
もしこの工場で作るとしたらGeforce GTX 6 SeriesのKepler世代まで遡る。Quadro K6シリーズ頃だ。


尚、TSMCが現在アリゾナに作っている工場は、5nmのラインである。投資額は、2021年から27年迄で1兆円を超えるが、投資額から逆算したコストを見ると実は最先端の方が安いのが見て取れるはずだ。昨年のITmediaの記事には売上げベースも掲載されているが、TSMCのラインで28nmの涸れたラインは当時でも売上げベースでは減少を続けていた。※

※(ちなみに、古いラインにある使い終わった一部の製造装置は、中小のベンダーに中古として払い下げられることも多い。そうすると、安い投資でそれなりの品質の製品を作れるため、中小のFabは設備投資費の償却が早くなるため、販売単価を抑えるのが楽というメリットがある。


何故TSMCが合弁で設立することにしたのかというと、単純に単独でこのラインに数千億も投じて上手く捌ける保証が弱いからだろう。半導体不足だから、今は良いのかも知れないが……半導体がその頃十分に供給されていれば、この工場で作る製品が果たして海外から買うより安くて魅力的なチップになるのかと言われると微妙だ。それが、日本の政府も国内企業も含めた甘さである。その殆どを日本で買ってくれるなら良いよということで作ったのだろうが、逆に言えば、24年の時点で20nmライン以上の目処がないという意味であり、日本で最先端のプロセッサーやSoCを独自開発して世界に売るような状況には既にないことを示している。

それを国も認めたと言うことだ。


その昔、日本はシステムLSI(SoC/FPGA/ASIC)において、最強とも言われていた。2000年代前半に最後の聖域と呼んでいた部分だ。実際には既にその頃には凋落しかかっていたが、あの頃はまだ自動車だろうが家電だろうが使っている半導体パーツは国内の先端工場で先端技術を入れて作っていた。それが日本での半導体競争力が落ち海外に負け始め国内企業が自社生産を諦める中で、そこそこに留めて生産するようになった。そして、いつのまにかそれで満足できる製品しか作らなくなった。

それでも、十分な性能があるからだ。今は国内で先端と言えば自動車向けとエアコン、産業ロボなどにシフトしていて32~60nmなのだが、それより高性能だから、20nmとし、しかもそれのために、この工場を作って、契約としてほぼ全量を日本で売ることが前提なら、この産業でも日本は負け始めるだろう。

何故か?

海外はこんなところで止まってないからだ。今の日本の不味いところは、「自分は」または「日本人は」「僕や私の周りの人は」それで満足しているから、それより一つ上ぐらいで何とかなるだろうと思っていることにある。

しかし、現実は世界と競争しているわけで、復活させたいなら少なくとも、先端かその一つ前まで一気に進めるのが好ましい。日本は20年ぐらい前までそうしてきたはずなのに、それをしなくなり、そこそこで線を引くようになったのだ。給料などの問題があり生活で買えるものに線を引くのは仕方ないが、物作りや研究、または投資ででそれをやれば、その技術が全ての根幹にある場合、全ての産業の根元を弱らせ引きずり落とされることになる。

これがこの国の今一番の弱みとなっていると言える。まあ、国が資金を出さないなら、本当にソニーなどが利益を出せると見込んだ事業だからそれで良い。しかし、今これに税金使ってというのは……国と役人が本当に素人なんだと失望する。行動計画をそういう人間が作るとまた衰退が加速するだろう。

ソニーとTSMCの共同事業を聞いて、自分の成果としてただ乗りしたというなら、何となくイメージは湧くが、もし本当に成果だと言っているなら、そういう人間が国の行政や政治の中枢にいる間は、この国は衰退を続けるだろう。



































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