高速だけど高発熱、大電力に喘ぐQualcommとIntel。Snapdragon SM8450もお熱い模様……トップランカーの苦悩。


GoogleがSoCをSamsungと共同開発したというTensor SoCに変更したPixel 6シリーズは、性能も悪くなく(Qualcommの888ほどではない)その発熱が少なく、高い演算効率によって今のところ評価も悪くない状況で売れているようだ。初回出荷量も少ないことも影響しているのだろうが……。ちなみに、Pixel 6にも評価を下げている面がいくつかある。それは、

バッテリーの急速充電が期待通りには出来ないこと⇒多分不具合と思われOTAによるファームやビルドアップなどで対応されると思われる。
指紋認証に時間が掛かったり、失敗することがある⇒これは仕様かもしれないので、操作の仕方で対処することが今のところ推奨されている模様。


の2点が今主な問題として上げられている。他にも細かな問題はあるようだが、Tensor SoCへ変更したことによる問題は特にないようだ。むしろ、Tensor SoCのベンチマークをiPhoneや888と比べた記事などに対して、利用者などから別にそこまで求めてないしと言われるぐらいに、表は良いと言える。

まあ、実際問題として、大多数の人はベンチマークで示される性能より、実用性能の良さ(安定性、バッテリーの持ち、大きさフィット感など)の方に目を向け始めている。


そんな中で、次期Snapdragon のフラッグシップのES版(engineering Sample)の情報が6月頃出はじめており、それらが888並かそれ以上に熱くバッテリーを消耗するという噂が流れている。まるでIntelみたいな話だが、ES品で未だにその情報が出ている辺り、製品版までに抑えられるかどうかは結構厳しい状況なのだろうと思われる。

ちなみに、前回の888ではHexagon DSPが世代交代したが、今回はGPUとMedia DSPであるAdrenoが5年目にして世代を刷新させる見込みで、FP32換算で2Tflops(推定で1920~2580 GFlops/抜本的な変更がなければ2150Gflops辺りが最大と推定)を超えると思われる。
さらに、AV1のデコードなどがサポートされると推定されている。

そして、CPUのPrimeコアがCortex-X2になる見込みであり、モデムも新しくなる見込みである。
一方で、リソグラフィはSamsungのN4ノードが使われるようで、N5より数字上は1世代進むが、十分に熱を抑え込むほどではないようだ。

いけると思って設計してみたものの、ライバルと競争するとクロックなどを上げざる終えず、電力バランスが維持出来ないというのは、Intelと似ている辺り、Qualcommも厳しい状況にあると言える。


<絶対的なベンチマーク性能より電力性能のスマホ>

PCでは、絶対的なベンチマーク性能を求める人もまだ沢山いるが、スマホはそれに比べると、早いペースで最上位の市場占有率が下がり始めている。日本は所得やキャリアのビジネス戦略の変更もありより顕著だが、欧米など海外でもその気は強くなってきている。

何故、電力性能が重視され始めているのかというと、単純にバッテリの増量がそろそろ限界を迎え始めていることと、これ以上筐体を大きく出来なくなってきているからだ。これまで、筐体を薄くする一方で、バッテリーの容量が増えることで性能をある程度上げることが出来たのだが、それが手に余るほどの大きさになり始め、薄くするにも難しい状況となり、限界を迎えたことでスマホの1回の充電での運用時間が下がり始めたのだ。

プロセスノードの微細化で支えて居た時代は既にとっくの昔に終わっていた中で、この問題は常に持ち歩き電源がオン状態のコミュニケーション端末であるスマートフォンでは無視できない問題となってしまったのだ。

一方で、スマートフォンでは、特別高性能な処理を求めることは少ない。強いて言えば、スマホで高度なビデオゲームをする人ぐらいが、性能を求めるぐらいであるが、そういう人でも、実はSnapdragon 855を超えるぐらいの性能があれば、5Gモデムを求める場合を除いて、4Kディスプレイでも困る事は無い程度のゲーミングが出来る程には高性能であった。結果、ベンチマーカーや雑誌・ネットメディアがベンチマークなどで善し悪しを示す割に、Qualcommの評価は高くない状況に陥り始めた訳だ。


<Appleをライバルにしていると売れなくなる恐れもある>

Qualcommにとって頭痛の種となり始めているのは、Appleの性能を追うかどうかにある。これは、IntelやAMDにも言えることだ。

実は、Appleと熱設計電力とパフォーマンスを比べ続けると、汎用機はプロセスノードで消費電力を大幅に下げる技術でも生み出せない限り、不利になるという問題が既に出てきているからだ。


そもそも、AppleのiPhoneにもしAndroidを組み込んだ場合、性能はSnapdragon 888ほどないと推定される。しかし、実際にはiPhoneがベンチマークで優秀なのは、iPhoneのOSはドライバーと抽象化レイヤーを作る必要がなく、OSカーネルで全てのハードに直接アプリーチして処理するデータを該当のハードに割り振れるからだと推定される。
CPUやGPU、メディア系のコプロセッサーも全て独自なら、カーネルを殆ど介さずにCPU、GPU、コプロセッサーの間でデータを融通できるという利点まで働く可能性がある。だから、クロック周波数は低めにする代わりに、複数の専用エンジンを組み込んだり、専用の加速命令を追加することで高速化することが容易になる。

これは、その昔日本の家電メーカーが専用の画像処理エンジンや音声処理エンジンで一斉を風靡した時代のやり方に似ている。それほど性能がないMIPSなどのリソースでも、特化した処理に関しては十分以上の能力を発揮したのは、汎用ドライバーとレイヤーによる仲介が不要だからである。


AndroidやWindowsなどの汎用OSの場合は、まず機種毎に異なるハードに合わせた設計を前提としている。
だから、ドライバーによる抽象化が必須となる。同じSoCでもドライバーはCPU、GPU、オーディオ、DSP、エンコーダー、デコーダーで異なる。何故そのようになるのかというと、ハードウェアの仕様がそれぞれに違うため、全体で統一された仕様を決めておき、その要件に従わせる必要がからだ。そうしないと、ハードウェアが変わる度に、OSの仕様も変更し、OSで動くソフトウェアの仕様もそれに合わせて変更しなければならなくなる。

ここで問題なのは、CPUとGPU、DSPを股に掛ける処理があったとして、CPUからGPUに、GPUからDSPにそのままデータを遷移できるとは限らないということだ。汎用プロセッサーや汎用OSでは、規格さえ満たしていれば、どのハードでもOSをインストール出来る代わりに、互換のために最小限の規格に基づく足かせがあるからだ。その都度、ハードウェアとソフトウェアを仲介するレイヤー層に戻し、カーネルに受け渡しのコールを確認してから、CPU⇒GPUへGPU⇒DSPにと飛ぶこともある。汎用の欠点とされる。


これまで、汎用の方が性能面でもリード出来たのは、性能や機能における競争原理が働いてきたからだ。しかし、今は微細化技術に限界があり、バッテリー容量を増やすにも安易には出来ない。筐体を大きくしたり、廃熱を増やす為に、筐体をさらに薄くするのも不可能だ。そうなると、手詰まりに入っていく。

逆に言えば、GoogleがTensorを投入したのは、Androidそのものを完全にTensor専用設計にするのは無理でも、汎用性を維持しつつTensorに最適な演算効率が出来るモードをAndroidに内包することで、熱と電力の効率を引き上げることを目指したからだt思われる。実際に、Tensorは実際のベンチマークにおける演算性能が圧倒的にはならないが、Androidの処理全般において許容できる発熱で、それなりに高度で安定した性能を維持していることが分かっている。これは、ベンチマークでは出にくい横(GPU、CPU、DSP、セキュリティハードウェア)の繋がりをTensorに最適化したためと思われる。


Qualcommにとってこれは脅威である。

だからといって、電力を犠牲にしない落ち着いたプロセッサーを出しては評価をさらに落とす危険もあり、そうでなくともこのままでは不味い。電力性能が下がり始めている今、一部のスマホ製造メーカーは、最上位のフラッグシップモデルにQualcommの最上位ブランドを選ばなくなり始めているからだ。700系などを選ぶようになっていると言うことだ。何故そうなるのかというと、そちらの方が電力パフォーマンスが良く、売れる事と価格も安くなるからだ。満足度が高いという意味である。


最上位が最上位らしい性能ではないと、ベンチマーカーに邪険にされ、雑誌などの記事書きが叩いてくる。
その狭間で苦しむことになってしまったのが現実といえる。

本来は、Snapdragon 855~865並のものをSamsungのN4ノードやN5ノードで製造し、消費電力を少しでも抑え込むことが出来るのがベストだろう。しかし、フラッグシップは毎年新製品を出し、その新製品のために、製造ラインも置き換えるため旧品は他の普及ラインとは異なり、製造終了も早い。さらにフラッグシップは製品設計に数年を要しているため、簡単に戦略を変えるのも難しい。


Qualcommにとって指標になるほど天下だった時代は、そろそろ終わりかもしれない。
HiSilicon(Huawei)が居なくなったため、一時的にQualcommの競争相手は減ったが、これからMediaTek、Google、Samsungやさらに他のメーカーが出てくることなるか?それとも、これ以上の離反を防げるか?そのターニングポイントに来たのは間違いない。

あまり、半導体の電力性能が悪化するようなら、ハイエンドでの離反が今後増えて行くかも知れない。Qualcommの中で見え見えの性能分類比較されるより、オリジナルで省電力の割にハイパフォーマンスの方が、オリジナリティーという部分と低発熱や僅かでも長持ちするバッテリーという面で、評価が上がるからである。











































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