「致死率80%」のBウイルス病に感染した中国の獣医が死亡 …… ヘルペスウィルスの一種で、咬傷、体液感染です。

SNSで話題になっていた記事である。良く分からないがCourrierというネットメディアなのかな?ウィルス系はコロナのお陰で話題になるので、記事にしたのだろう。ただ、酷い内容だった。


まず、このウィルスは中国由来のウィルスではない。あくまで、中国で初めて見つかったというのが記事になっているだけだが……。
飛沫や飛沫核感染はしない。変異してもウィルスの種類そのものが変化するような大転換が起きない限りしないだろう。何故なら、単純ヘルペスウィルス(帯状発疹などをもたらすウィルス)の一種だからだ。ちなみに、このウィルスは宿主となる霊長類の体液を介して媒介する。即ち、宿主の多くが猿なので、別称では猿ヘルペスとも言われるわけだ。

日本でも感染例があるため、国立感染症研究所にMacacine alphaherpesvirus 1(McHV-1 or B Virus)に関する情報が2019年に改訂公開されている。この頃に現在から見て最後の確定感染者(感染源が特定されウィルスが分離された感染者)が国内で確認されている。

今の社会だと、猿との接点が少ないはずなので、一般への感染はあまりないはずだ。

尚、タイトルに致死率は8割と書かれているが、実際のところはこれらの動物媒介ウィルスの致死率ははっきりしていない。
人に感染して発症認定された人の致死率は確かに猛烈に高くなるのだが、それは重症化して病院で精密検査を受け、ウィルスが見つかったからである。インフルエンザなどの飛沫感染ウィルスと違って、これらの血液や体液(唾液、潰れた疱瘡の中の液、汗)などを介して感染するウィルスの場合は、人-人の連鎖感染が起きることが少ない上に、無症状に留まるケースも相当程度あるのだ。

ヘルペス系では特に難しいのが、発症までの時間差である。
国立感染症研究所の記事にも書かれているが、爆弾のように数年~10年以上、節(神経節)で眠って(潜伏して)から発症するケースもあり、生涯発症しないことも間々ある。だから、単純ヘルペスでも致死率というのは何割で示せるほど単純ではないということになる。

まあ、猿関連のヘルペス(Bウィルス)の場合は、咬傷などを受けたり、傷口や目などに猿の唾液が飛ぶようなことがあれば、可能な限り速やかに綺麗な流水で患部などを洗浄することである。

ということで、恐れる話ではないし、もし何か猿と格闘するようなことがあったり、動物園などで猿に引っかかれたりということがあるなら、すぐに流水で洗い流し、必要なら消毒(イソジンなどを使って患部を消毒すること)が大事だ。傷を治すだけなら消毒しないほうが早く治るとされるが、感染性のウィルスや細菌の侵入を防ぐには消毒して必要ならもう一度患部を洗い流してから絆創膏などで保護するのが良い。

<問題はここから……>

ちなみに、この記事の半分はこのBウィルスの話ではなく、痘(とう/Poxviridae)に関する記事である。
これは、全くBウィルスとは別物で、人類史において既に撲滅した唯一の感染症である天然痘の別種(他の動物に感染する同じ属性のウィルス)のことを指している。何故、痘ウィルスとヘルペスが混じって記事になっているのかは分からないが、変な記事である。


牛痘や猿痘は致死率が低い。牛痘に関しては天然痘より遥かに致死率が低いため、その昔は天然痘の生ワクチン代わりに使われたという歴史もあるほどのウィルスだ。牛痘という名前だが、主に牛が感染源という訳ではない。元々はネズミなどの齧歯類が媒介し、それを捕食していた猫を介して人に感染したというウィルスである。これが、実は今のワクチン接種という概念の元を生み出したウィルスであるともされる。

猿痘は霊長類などで媒介してきたウィルスが、人にも感染するというもので、天然痘とは別の系譜で生まれた似たようなウィルスである。
潜伏期間は7-14日である。こちらの致死率は、高くても1-2割ほどである。天然痘のワクチン(生産終了済み)が症状の緩和に有効であるとされる。
尚、当該の記事にある感染者は死亡していないはずだ。


<信頼があるものでもWeb記事には気を付けねばならない>

というのが今の時代の恐ろしい点だ。
当該の記事もそうだが、コロナ(SARS-CoV-2/COVID-19)が広がったことで、ウィルス(Virus)や細菌(bacterium)に対して、対策や感染の経路なども書かずに恐怖だけを煽る記事も多いからだ。

そもそも、病気に関して記事がやるべき事は、その病気がどういう病気なのかを説明することであり、致死率や誰々が感染したという話を持ち出すことではない。それは、ただの井戸端会議の話で「怖いね!」というだけの話であり、下手をすればその記事が広がる事で、「あそこは危ない、あの人は危険」というだけの状況に繋がることもある。あの病気の人が入院した医療機関関係者はお断りとかなるわけだ。

それがたった1年前にあったのに、そんな記事が広がってはいけないのだ。

それを踏まえて医療系の記事は書かれなければいけない。しかし、SARS-CoV-2/COVID-19の影響もあって、そういう記事は後を絶たない。
だから、記事を読む人が、そういう記事を目にしたときに本当かなと調べることが大事である。

今回の場合は、ヘルペスと痘が混ざりあって、一体何が怖いのかもなければ、内容も杜撰だった記事であったこともあり、このように示したが、調べることや信じすぎないことも大事である。ある意味では、ネットというのはメディア系でも徐々に信用度が下がっている証拠と言えよう。

まあ、最近は家に傷薬を持たない人も多いだろうが、傷薬は1つぐらい持っておく方がよい。

特に、この時期は海や山に行くことも多いはずで、傷を作ることは大人も子供多いはずだ。水でジャバジャバと洗い流せるならそれでも良いが、患部が解放された状態の場合は、傷跡を更に何かで傷つけることで、感染症になることもある。だから、軽く水で流したあと、傷薬で消毒して、さらに軽く水で流して絆創膏を貼るという措置も大事な場合がある。

今は、昔の流れる液体ではなく軟膏タイプの傷薬も多いので、絆創膏の予備がないとかそういう場合にはこれを使うのも手である。








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