10Gbpsでつながる超高速な5Gモデム「Snapdragon X65」…… 日本での使い途はベンチマークぐらいな10Gbpsと……あったかも知れない未来。

PC Watchの記事である。

技術としては確かに凄いのだが……5Gの次は6Gだとかいう話でももう無いのでは無いかと思っている。

最大速度が例えベストエフォートでなく、10Gbpsを最小保証したとしても、20GB/月の制限があれば、10Gbpsは1秒間に推定1.25GB/sのデータを取り扱う訳で、16秒で制限値に達する。まあ、即時リミットが掛かる訳では無く、たいていは23:59~0:00にリセットされ0:01までに制限が掛かることになる訳だ。

ちなみに、それより大きな問題を言えば、10Gbpsをしっかり使い熟す通信って何だ?という話も出てくる。
最近はアプリが常時通信することも多いが、流石に10Mbpsもあれば事足りることが多い。動画コンテンツでさえも、サーバーの帯域やストレージ負荷を抑えるために,VP9、H.264/AVCから少しでも容量を稼げるAV1やH.265へと移行を始めているほどである。

ストレージの容量も増えにくく、さらに単価も下がらない時代で、速度も電力と熱設計を考えると伸びていない。高速にすれば熱く高い電力消費になる半導体ストレージを使うためだ。HDDがもっと大容量になる時代なら良いのだが、HDDの増加ペースは鈍ったままだ。だから、使い熟す時代が来るとしても、まだまだずっと先だろう。

実質で言えば、今5Gの速度面でのアドバンテージは、消費者サイドではなく、通信事業者におけるアクセスポイント1カ所辺りの接続台数を増やすためのものでしかない。それでもこういう発表が行われるのは、消費者側に売るときのメリットのように未だに伝えないと売れないから、それをやっている感が強いのだろう。

尚、10Gbpsクラスになるとバックボーン(無線ではなく有線で繋ぐアクセスポイントより先の線)も、張り替えなど大規模な刷新が求められることがある。
また、5Gは低遅延を売りにしているが、この低遅延を売りにすると、サーバーなどの投資も必要だ。クラウド処理などと連動させる自動運転などの場合は、アクセスポイントから極力近いサーバーを利用する端処理(エッジコンピューティングと呼ばれる)が求められる場合もある。

通信が高速化し、低遅延になったからと言って、それ以外の回線やストレージ、サーバー、サービスなどの仕組みが準備出来なければ5Gの恩恵は受けられない訳で、事実上現在これらの高速通信の恩恵を誰でも体感できるのは、通信ベンチマークソフトで3Gbps出たぜ!と、喜ぶ速度厨か、大量のクラウドデータをスマホやPCでダウンロードするような輩ぐらいしかいない。

後者の場合は、無制限プランでも使い過ぎればアクセス制御(1日~3日間通信速度の上限を抑えるリミッター)が掛けられることがある。

尚、もう少しまともに政府や社会が機能していたなら、この恩恵が社会や経済を発展させた未来もあったかもしれない。
少なくとも日本は、政府がもう少しまともだったなら、X65モデム搭載機を心待ちにした人もいただろう。


<速度の恩恵を捨てて短期的な儲けに走った携帯電話の今昔>

ちなみに、iPhoneやAndroidの登場がもしなければ、今5Gは高速大容量で定額だった可能性はある。これは日本だけでなく世界でそうだったかもしれない。理由は単純で、携帯情報サービスを別に設けることで、通信容量をある程度抑えられたからだ。iModeやEZ Webなどのサービスがそれだった。アプリも、iアプリやEZアプリなど容量の少ないスクリプトアプリを使う仕組みだったため、その状況が今も続いていたならもっと違った通信時代になっていただろう。

まあ、その仕組みだったならきっとLINEなどのサービスは誕生していなかっただろうが……もしかすると、MixiなどがFacebook(Instagram)などを超えていた世界だったかもしれない。

スマートフォンはその世界を一転させリッチコンテンツと世界共通のオープンアプリの環境を生み出した。
その結果、通信データ容量を移動体通信事業者がコントロールすることが出来なくなり、基地局不足と、帯域不足が常態化してしまった。結果、4G LTEの登場から一気に世界で帯域制限やデータ容量制限が掛かるようになった訳だ。今では、その制限故に、Wi-Fiスポットもお店や施設に充実する時代となった。国内はもちろん海外でも……。

この瞬間からモデムの高速化は消費者にとっては事実上意味のないものになってしまった。
いや、正しくは最初の数年は意味があった。繋がらないとか、イベントなどの会場で電波が取れないとかそういうのが頻発したからだ。だから、制限を歓迎した人も多く、それに通信キャリアは乗じた訳だ。しかし、それが一般化した後に、キャリアは当初述べていた制限の緩和をしない選択をしてしまった。それが、結果的にハードの通信速度アップの恩恵が消費者にないという状況を生み、ハードの買替えなども進まなくなる原因になった訳だ。

日本では、特に政府の支持率を上げるための材料にまでされ、難しい議論をしている体を、都合のよい専門家の集まりでやってしまった。その結果、もう日本は通信で稼げる環境から遠くなってしまった。本来はもっとシンプルに出来たことなのに……。


<上の速度が上がるなら、下の速度も上げられる>

元々速度制限や帯域制限の趣旨は当初から、アクセスポイント(基地局)に対するトラフィックの増大を抑制するためのものだった。
だから、大量に使う人に対して一定の制限を設けることで、誰でも公平に通信の恩恵が受けられるようにという体で、制限は世界的に浸透した。
その中で、日本は容量に達したら128Kbpsに速度を制限するというルールを設けたわけだ。

その時に、ドコモなどの事業者は、128Kbpsの制限は順次上げていく可能性もあり、検討するとしていた。結局しなかったけど。これをやっていたらどうなっていたかというと、たぶんキャリアもさらに儲かっていただろうし、ユーザーも安く恩恵を受けていただろう。1度、これを是正するタイミングは政府(公正取引委員会)にもあったのだが、彼らはそれをやらず、広告に書かれている最大速度の明記に対して、その速度を大きく表示しないように求めた。本来は、最大速度を明記するなら最小速度もそれに合わせてあげるように求めていれば変わっていたのだ。

これはずっと以前にここで書いたことの焼き直しだ。

例えばこれをスマートフォンのモデム仕様に合わせて、最低速度を決めるように端末側にファームを作るような仕組みをQualcommなどのベンダーに求めればきっと今、MVNOやMNOが価格で競うことも無かっただろうし、最新のスマホももっと売れていただろう。
実際にこれをやっていたらどうなっていたかというと、以下の表のようになる。

モデム最大速度仕様世代速度
~37.5Mbps128Kbps
37.5~75Mbps
128~256Kbps
75~150Mbps4G256~512Kbps
150~300Mbps4G512~1024Kbps
300~600Mbps4G1~2Mbps
600~1200Mbps4G2~4Mbps
1.2~2.4Gbps4G4~8Mbps
2.4~4.8Gbps5G8~16Mbps
4.8~9.6Gbps5G16~32Mbps
9.6~19.2Gbps5G32~64Mbps

この場合は、4Gと5Gで多少料金形態を変えても評価が得られた可能性がある。
また、キャリアスマホは上記機種の方が今も売れていただろう。

もっと言えば、980円~1980円で1GBみたいなプランでも満足する人は多くなっていた可能性が高く、逆に大容量を望んだ人との差も十分に得られただろう。今となっては、政府によって2980円で20GBにまで引き下げられているが、その先の速度は、この表に当てはまる速度にもならないサービスも多い。

これは、欧米など諸外国も似たようなものだが、短期的な儲けに走りすぎて、長い目で得られる全体の利益を失ったのだ。
日本はもっと酷くなった。本来ならMVNOとMNOが棲み分けるはずの国で、MNOがMVNO化し、MNOが事実上消えていく社会へと変わった。

新興国以下にこれからキャリアの存在は変わっていくだろう。実際に、NTT(ドコモ)やKDDIは、一部成長しそうなサービスやこれまでそれなりに売り込んでいたサービスを縮小したり、見直したりという動きを強めている。短期で利益を生み出す物だけに選別していかないと先が厳しいからだ。

既に影響は出ているが、これから通信系の解雇も増えるだろう。今の政府は、自分達で社会を煽った後、消費者や報道が求めるままに料金を下げる代わりに法人税と、雇用の一部を不透明にしてしまったのに、それが値下げされただけで、何故か報道などは喜び勇む話を流し評価される国になってしまった。これが、デジタル庁を生み出す社会なんだから……凄いよなと思う。本当に国自体が老体へと変わっている証拠だろうが、このままだと途上国以下になる日も近いだろう。

ともかく、10Gbpsで繋がる製品に誰もが憧れ売れる社会は今の日本では来ない。それは悲しいことだが、これが売れる可能性がある未来も我々は過去に摘んでしまったがあったということを、忘れてはいけないと思っている。今からでもそこに戻れるなら戻るべきだが、1度、出来た道を戻るのは不可能だろう。だから、この先を良くするしかないのである。

これから、ところが変わればきっとこの10Gbpsのモデムがよく売れて日本などより遥かに早く普及する国もあるだろう。
そういう国はきっと、上記のように最大の速度は出なくても、結果的に速度が上がる恩恵か、または技術開発のバランスを政府も含めて考えている国や自治体だろう。

先に書いたように5Gという技術はモデムが進化して、アクセスポイントが対応しても、実際にその恩恵を余すところなく行き渡らせるには、4Gや3G時代とは比べものにならないほど、周辺の技術投資が必要だ。この投資がこの国で迅速に生まれてくることを願っているが、ソフトバンクもKDDIも、NTTもこの投資を今まで以上に大きくすると言う発表はせず、企業としては縮小させたい雰囲気が強いのが心配だ。

その代わりとなるものが生まれてくるように、我々は考え続け行動し続けなければいけない。


















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