「Ice Lake世代の32コアXeonは64コアEPYCを上回る性能」……げっ!インテル入ってた(選んじゃった)ってならなきゃ良いが……。

PC Watchの記事である。

プレスニュースの記事を読むと、東大や阪大でもIce Lake-SPが先行導入されているようだ。

内容(映像を含めて)を読むと分かるが、32コア×2の構成と64×2の構成との勝負で、AVXを利用した場合の比較である。
IntelのAVXは512(3.x)なので、それに最適化されていれば高速になる。しかもIce Lake-SPにはDL/ML向け命令が充足されており、モンテカルロシミュレーションなどはお得意なのは当然だ。裏を返せば、そういう特定の役割に最適化していないと、この効果は発揮されにくいことも示している訳だ。

まあ、HPCの場合は総じてミドル(やOS)でワークロードを最適化出来るので、汎用性を売りにして成長したZenベースのEPYCに対してこの売り方をするのは、とても上手い戦略といえる。Xe Graphicsの内容も含めて、美味しいところを上手く纏めた雰囲気がある。

一方で、それがScalable(拡張可能な)プロセッサーとして素晴らしいのかというと……何とも言い難いところだろう。そもそも自社で全て拡張するのか?とかいろいろとツッコミどころがあるし、「敵手として選んだ相手もこれで良いのかねぇ!」と思う。

どちらかというと、EPYC 7742相手にこの程度しか差が付けられないのは大丈夫?ということだ。
何故って、EPYC 7742(Rome)はZen2である。しかも、AVX2.0(AVX-256)ベースの製品であり、AVX2.0ベースのFPU/ALU演算性能そのものは大差ないはずだ。初期出荷されたのは1年数ヶ月も前なのだ。もちろん、今販売されているライバルの最上位はこれしかない訳で、だからそうなるのだが……

これから、Ice Lake-SPのライバルとして登場するのは、
Zen3ベース(AVX2.0のままである)のEPYC 7713(Milan)であり、少なくともコア性能はかなり上がってくる。
既に海外ではベンチマーク情報に関する記事が書かれているがかなり出来は良い。


こういう部分を考えると、Intelはそう簡単にライバルとの差別化で勝利することは出来ないだろう。
特に、特定のワークロードで強いことと、突出した性能の強みはなくとも、今まで汎用で使われてきた処理も含めたオールラウンドでコアの数が効いてくる処理とで比べると、AMDにまだまだ歩がある処理は多いといえる。

いわゆる今のIntelは昔のAMDのようにある処理だったら、凄いよと言っているに過ぎないのだ。
Intelはコアに搭載する命令数を増やし、クロック辺りの処理サイクルを上げることに重点を置いてきたメーカーだ。順調に微細化さえ出来ていれば、これは4年前ぐらいに投入されているわけで、AMDなど圧倒する製品が出ていただろう。Ice LakeやTiger Lakeを見れば分かるが、それが出来なかったのは痛い。まあ、そもそもAVX-512F(Foundation)がAVX2までの世代ほど高速化の流れを生み出さなかったのも大きい。

その間にAMDは命令を増やすことよりも、コア数を増やし、そのコア同士の連携性能とコア内での分岐やステージ処理の効率を引き上げ続けた。大規模コアでの調停や分岐の失敗に伴う遅延を軽減することには特に力を入れてきた訳だ。これを今インテルが追うのは難しい。

今のIntelは、評価も低く足を引っ張っている命令セットをサーバーで生かすという道を選ぶことで戦いを有利に進める選択をしている。この領域では、汎用性がある面で低く完全に専用の目的で使われるため、最初からそれだけを狙ったソフトウェア開発が行われれば、高速化出来るからだ。

しかし、それがScalableなのかというと……ではある。どちらかというと、HPCの「ある決まった」分野での骨頂にはなるだろうが、EPYCの方が特別どこかで秀でているわけではなくとも、純粋なx86-64プロセッサとして評価され、特定の分野に特化するならaccelerator(加速器/アクセラレータ)を追加すれば良いという昔のIntelがやっていたような、誰もが選び取りやすい波をまだ掴んで離しそうにない。

このニュースリリースを見ると、NECのSX-Aurora(TSUBASAではない)やPowerっぽいところをもう一度掘ろうという雰囲気がある。
だんだんプロセッサーとして汎用性より尖って(全体で凄いよりある特定に強いように見せて)きているのは、先の計画がまだ厳しい状況にあるからかもしれない。


Intelは最初に拡張命令セットをx86プロセッサーに統合したときは、Pentium with MMXというブランドで展開した。通称はMMX Pentiumで、開発コードネームはP55Cという製品だった。あれが、Intelがx86に命令セットというものをどんどん付与する流れを作った瞬間だろう。命令セットでAMDやCyrix、IDTなどのメーカーとも競うことになったが、結局、沢山の命令セットが追加されるようになり、プロセッサーブランドに命令セットブランドが付くことはなくなった。しかし、今のIntelはその力を与えてくれている命令セットブランドを付けた方が、結果的に開発する人を増やしたり、市場の評価を上げる可能性があるのではないかと言うくらい、それに依存しつつあるのが心配だ。依存しすぎて、しかもその機能をブランド名などで結果的に多くの恩恵を与えている機能を全面に示さない状況だと、結果的に期待値と評価が逆転することもありえるし、実際にそういう傾向は既に見られる。

何世代も、依存が続かないのなら良いが、Sapphire Rapidsなどの開発情報も地味に後ろズレの予感がある中で、余り依存しすぎると、軌道修正などもしにくくなるだろうから、依存率が高いならブランドにそれを付与して、ずっとその機能は続けたいという旨を示した方がよいだろう。


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