瀬戸内海「きれい過ぎ」是正 水域設け対策、漁業影響防ぐ―法改正へ・環境省 …… 環境省がすべきはそこじゃないと思うが……

時事通信社の記事である。これを本当にやって大丈夫なのかという記事である。というより、今や環境省も環境ではないのだなと思う。別に、他の省庁が環境省に求めるなら別だが……環境省がこれを打ち出すのは驚きである。


まず、瀬戸内海の水が綺麗というのは、論外だ。瀬戸内海はプラなど漂流物による汚染が増加しているからだ。さらに、赤潮の数は減っているというが、無くなった訳では無いし、赤潮が出ないから綺麗な訳でもない。もっと言えば、土砂流出が極端なことの方が今や問題の大半だろう。

<綺麗な海の条件>

綺麗な海とはどういうものかというと、窒素やリン、炭素系の有機物が適度に混じり、それらを捕食する多種の微生物が海に流れ出す環境である。
北海道や東北、北陸の一部地域では林業再生の計画を立てて、森を再生したり、用水路のU字溝を除去して石垣などに変え、自然河川に戻すという対応をする場所もある。ちなみに、何十万人の人口のし尿がなどが流れ込む川や海という意味ではない。もちろんそれでも、生き物が増える可能性はあるが、その場合は、人口構造物(簡単にいえばアスファルト、コンクリート建材)を無くす必要があるだろう。


何故そういう対応をするのかというと、植物や水草が生えない河川や側溝、用水路が増えると有機栄養が水に溶け出すことが減るからだ。例え用水路がコンクリートで固められていても、田畑が多く、それらが田畑として利用されていれば、それだけでも実は有機栄養は川に溶け出すことが多い。

それが急激に減って、宅地や商業地に変わっていくと、一気に海に流れ出す栄養は減って行く。
もっと言えば、それより上流にある森が死ぬと人の人の営みより遥かに打撃が多くなることが既に分かっている。

森は青々としているから大丈夫と思う人もいるだろうが、それが既に間違いだ。

その辺りも説明すると、針葉樹林の森と管理のされていない竹林は死んだ森になりやすい。何故、これらは死んだ森なのかというと、それは葉っぱにある。針葉樹林の葉は、針のような葉であり、冬場でも葉が枯れ落ちることはない。いわゆる常緑樹だ。常緑樹で且つ針葉樹の特徴は、葉そのものが針のように尖っており固く、温度の変化に強いという点がある。だから、寒暖の差に強いのである。

この葉っぱは枯れて落ちても、分解が遅くふかふかの腐葉土の地面になりにくい。即ち、保水力がないのだ。そのため、乾燥し易いという特徴もある。そのため、生き物も生息数が減るため、余計に地面に落ちた葉の分解が進まない。そもそも、地面に葉が落ちるのも広葉樹ほど多くなく限られている。さらに、この木は総じて根張りが横に広がる傾向があり、弱い。

だから、大雨が降ると土砂災害が起きやすい。これは竹にも見られる傾向である。

ここで分かると思うが、森が針葉樹林帯ばかりになると、水の栄養価が下がるのだ。そして、大雨で土砂が流れ出しやすくなる。いわゆる森が土と一緒に崩れやすくなるわけだ。そして、残念な話をすると、四国、中国地方の山間部では、60年代~90年代に掛けて、檜と杉という針葉樹が植えられた。ちなみに、昔は薪(竈、風呂、ストーブの燃料として使う)としても使いやすい楢の木なども多かったとされるが、その需要がなくなり、殆どの森は、材木として使いやすいこれらになったのだ。

これが何をもたらすかはとても簡単な理屈だ。

端的に言えば、大雨が降ると土砂が流出して、河川の水を痩せた泥と土で汚す。痩せた泥で汚された河川は窒息し、そこに生えている植物や生きて居る動物を埋めてしまう。埋まると、埋まった生き物は多くが死に絶える。死に絶えた後に、腐葉土になれば良いが、そもそも流れ込んでいる土の栄養価が低く、微生物も少ない土が大量に埋まった状況では、栄養価は増えないどころか、むしろ余計に、表面の栄養価が下がる。

これを繰り返す。そして、最終的に起きるのは何かというと、海にその土砂が流れ出し、海の中でも栄養価が高い場所だったはずの場所で、砂漠化が進む。これを暫く繰り返すと、海の生態系は徐々に滅びる。


ちなみに、広葉樹と針葉樹が適度にある森では、これは起きにくい。何故なら、広葉樹が毎年一定のサイクルで落葉するからだ。
そして、その落葉した葉が腐葉土になる。もっと言えば、その腐葉土の葉っぱだけではなく、広葉樹の多くは木の実などを落とす。それを食べに動物がやってくる。彼らは食べた後に糞を落とす。その糞の中に微生物が大量にいるため、広葉樹の葉っぱはもちろん、固い針葉樹の葉っぱも分解が早くなる。

腐葉土はスポンジ状に分解されるため、保水力が高い。だから、洪水のような状況は起きにくくなる。さらに、広葉樹の根張りは地中に垂直に伸びる。だから、地盤の強度も増す。もし、地面の表面が洗われる程の大雨が降っても、多くの場合流れ出すのは腐葉土を豊富に含むスポンジ状の部分が混じっている。だから、それが梅雨時期や秋雨時期などに流れ出すと、夏または冬に掛けて川や海の生き物はより大きく成長する。

水生や山の動物や生き物も昆虫などもそれに載って動くため、川下に向かってそれを捕食する生き物も豊富になるだろう。

これが、山と川で繋がった生態系と言われ、豊かな生態系の綺麗な水といわれるものの本当の要件だ。(飲める水とかそういう意味ではない)


ついでにいえば、20世紀の高度経済成長期に何故、赤潮が多発したのかというと、栄養過多だっただけではない。これで一番大事なのは、生態系がどのように構築されていくかという点にある。水の透明度が下がれば、光合成で育つ植物は生きていけなくなる。生きていけなくなれば、それを食べる草食の生き物は死ぬ。草食の生き物が死ねば、それを食べる種がいなくなるという連鎖が起きる。その結果、死の河川が生まれ、そのままの水が海に流れ出すと、海は広いだけあって、外からそれを分解できるプランクトンが集まるようになる。それが、魚などが生きられないほど増えると赤潮だ。
しかし、分解のペースより汚れた水の流出が増えると、そのプランクトンでさえも死に絶える。それが、窒息性の青潮の原因になる。

即ち、栄養があろうがなかろうが極端な汚れが、生き物を殺すわけだ。その結果、海も死んでいく。

これが、20世紀に起きたことだ。

それで、今回環境省は何をするかというと、その行動経済成長時代に赤潮や青潮の原因になったものの一部に対して、下水処理場の排出規制を緩め、流せば栄養価が上がるのではないかという話をしているわけだ。確かに、それは上がるかもしれないが……本当にそれで解決出来るのかというと、多分難しいだろう。むしろ、別の害が出てくる恐れがある。理由は単純だ。根本原因の解消をしていないため、山から川、海に掛けて繋がる生態系を復活させる流れでは無く、海だけに餌を与える形だからだ。

もともと大雨災害増加による流出土砂の増加も解決出来ていない。大河川や中小河川で土砂流出が起きる度に、川底を掘り返さないといけない状況が急速に増え、河口付近以降に砂礫が溜まっても、対処が簡単にできる状況ではなくなってきている。この段階で既に、漁業が出来る場所は急減しており、水質を安定される場所が減っている訳だ。それに、護岸整備や埋め立ての増加もある。さらに、里山は荒れてきている。


即ち、川の上流の森から河口までの栄養価を上げて、農地などを増やし、微生物のバランスをとり戻すことが出来ないなら、そういう汚れた水を海に流しても、結果的に必要ない生き物(赤潮や青潮の原因)が増え始めるだけという可能性があるのだ。それを今から検証するという点もあるのだろうが……。そいう施策をするなら、環境省という組織なのだから、森の復活を目指したプロジェクトを立ち上げるべきだろうと私は思う。

普通に考えると、この施策は環境省が打ち出すプロジェクトでは無く、経産省や農林水産省(水産庁)辺りが示して、環境省や政府に特区を求めるようなプロジェクトだと思う。


尚、綺麗か汚いかで言うと、瀬戸内海は今もきれいではない。生き物が育つ環境(生態系)が壊れていくことと、実際に海として綺麗かどうかは別の問題である。


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