地球シミュレーターの仕様は3世代+次世代でどう変わって来て、どう変わるのか?

久しぶりにちゃんとした表記事である。
PC WatchやITmediaなどで先日、地球シミュレーターの次世代導入が決まったという記事があったので、この記事を書くことにした。


考えて見ると、今では富岳の方が圧倒する性能を持っているが、あれは性能を重視した製品であり、ハードの電力消費が2MW以下の地球シミュレーターと比較しては可哀想だ。

一応書いておくと、富岳は最大で28.3MWの消費電力を要する巨大プロジェクトである。

それに対して、地球シミュレーターは初代でも5MWクラス(実際には+空調で10MWぐらい)だった。それから、2代目で3MWになり、今は2MW以下という仕様に落ち着いた。次も2MW以下でほぼ同じになるようだ。

そして、性能はFP64換算で富岳の前の製品である京(12MW/FP64-10PFlops以上)を超える、19.5PFlopsを目指すようだ。
富岳は400PFlopsで投資額も消費電力も2倍以上に増えている(性能はそれ以上に伸びている)ので、目指している方向性が既に全く違うところに向かっていることが分かる。

ちなみに、次世代のSX-Aurora TSUBASAはベクトル型スーパーコンピューターと記事では書かれているが、厳密には違う。
ベクトルエンジン(VE)と呼ばれるaccelerator(アクセラレータ/加速器)を使うコンピュータであり、OSのロードベースはx86-64のスケーラブルコンピュータ(第4世代ではAMD EPYCを使うが、IntelのXeonモデルもある)となった。

ベクトル処理は、PCIe拡張カードとしてアドオン搭載されるVEカード(これがSX-Aurora TSUBASAの本体に相当する)で行う。
そのため、このブランドではOSもUNIX系SUPER-UXだったAuroraから、大きく変更され選べるLinux系ラインナップ(CentOS、RedHat Enterprise)になっている。

ということで、地球シミュレーターの仕様比較表が以下である。

ES_1-4.png

最初の地球シミュレーターは、CPUがSX-6のプロトタイプモデルだった。日本ではSX-5という扱いになっているが、何度も調べ直した結果、SX-6である。
SX-5で利用していた半導体を流用して設計するか、それとも新たに設計するかという記事があり、新たに作った方が良い(後者が良い)という判断になったという記事があるのだが、それを最後まで読まなかった人が、Wikipediaなどの記事を書いてしまったのだろう。

元々、ブロックダイヤグラムを見ても、ES1の設計はSX-6と大して変わらず(製品として出荷された物と、ES1の仕様は少し異なる)、製造プロセスもSX-6と同じである。そこを考えれば、SX-5ということはまずない。

こいつの成功を見て、京をという話が出たわけだが……。テクノロジーとして見ると富士通のコロコロ仕様が変わるそれよりNECはベクトル一筋で良くやってきたと思う。まあ、今回のTSUBASAで概ねベクトルプロセッサーの時代は終わり、Accelerator時代に変わるのだろうが……。

ES2世代は、調べるのに苦労した。
あまり資料がないのだ。たぶん、性能の向上幅が低い事が影響しているのだろう。しかし、性能が3.2倍、電力効率は5倍以上アップしており、もしこれで、同じ電力構成のノードだったなら、700TFlopsぐらには出来たのだろう。そうしなかったのは、電気代も含めたコストが運営元のJAMSTECにとって苦しかったからだと思われる。

ES3になると、設置面積が大きく減ったことで、報道陣まで招いての記事が結構あった。この世代は、性能を10倍引き上げたが消費電力は前世代の60%~66%(33%~40%)落としたとされる。広いサーバールームの一部しか使わなくても良いぐらいに大きさも小さくなっているから、こいつは凄い製品と言える。

そして、ES4だ。
先に書いたように、この製品はSXだがSXじゃない異色の製品になる。これまでは、NECのSUPER-UXというUNIX系OSをベースロードにフルベクトルの処理をしていたが、時期ES4ではCPUは別にAMDのEPYCが搭載されている。これが、Linux系のOSを管理運用し、PCIeで搭載されているSXカードをアプリケーション側で利用する形になる。もちろん、処理によってはEPYCと相互に演算出来るものもあるし、どうもマルチアーキテクチャ(一種のASMPに近い構成)を売りにするため、nVIDIAもGPUを提供する形でこれに参加しているようだ。

これは、NECがオリジナルのプロセッサーにオリジナルのOSを組み込んで売るHPC(スーパーコンピュータ)から、汎用のアーキテクチャに自社の強みをアドオンする形へと舵を切ったことを意味する。最近はnVIDIAが急速にHPCで進化しており、Intelも同じようなアドオンカードに力を入れようとしている。だから、NECのこの流れはHPC分野において当たり前の流れと言えるだろう。

この先には、プロセスノードの限界も迫っており、下手に汎用(CPU)側に固執すると自らが設計した汎用プロセッサーが足かせになることも有り得るし、逆に言えば、汎用部はAMDが売れるときには、AMDをIntelが売れるときにはIntelを、Arm系が広がるならArmをという選択も出来るようになるため、そういう面でもこれはある意味良いやり方と言える。

一方で心配なのは、外部カードを使ったアドオン系は他への浮気もし易いことが心配なところである。

ES4はきっと5年~6年ぐらい使われるだろう。
そして、次は順当ならES5になるわけだが、今のSX-Aurora TSUBASAがそうだが、16nmの次世代の製品が出てくるかどうかは分からない。何となくだが、この次はアドオンがnVIDIA辺りでNECから納入されるパターンというのも有り得る。
















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