Alder Lakeに賭けるIntel はAVX-512Fを捨てるかもしれない …… 命令セット削減の兆し。

Phoronixの10日の記事によると、Intelは次々世代となるAlder Lake(sapphirerapids製品群/Golden Cove MA)でAVX-512などを捨てていく流れであると示しているようだ。

<多難のAVX-512>

まあ、AVX-512Fから始まるAVX-3.x系の命令は始まりから、評価が散々だった上に、一般向けで最初の製品になるはずだったSkylake Micro-Architectureでは一般向けに提供できず、マイクロコードで止めざる終えないという状況になった。そのため、実は殆どのアプリケーションでは使われる事がない。まあ、Windowsそのものでのアプリ開発が減ったのもあるが、最初で躓いたのはかなり大きかった。
その後、Kaby Lake~今のComet Lakeまで同系列では機能していないのだから……。強いて言えば、GPUレスの製品群だけで計画より数年遅れたもののサポートが行われている。後は、Cannon Lake版の中国等の一部ベンダーで少量提供された製品がサポートしている。

これは、Xeon Phiでも評判がまちまちで、熱効率が悪い上に、高速化出来る処理が偏っており、扱いづらいと言われていた。だから、512系の命令を後からあとから増やすことになったのだろう。Foundationで十分かと思われた512系命令はその後20セットも生まれるカオス状態になった。しかも、ハードウェアごとにサポート命令が違うという複雑なものだ。終いには、VPCLMULQDQ(Packed Carry-less Multiply Operations)とか復活の呪文か、呪いの呪文のようなものまである。

AVX2020.png
AMDも今のところAVX-512のサポートは明言しておらず、この調子だとTiger Lakeを最後にデスクトップラインからは消えるのかもしれない。サーバーでは暫く残る可能性もあるが、Intelは今回、脆弱性に繋がるものも含めて、現在利用率が低い多くの命令セットを殺す(消滅させる)計画に移っているようだ。既に、UHD BDでしかメジャーには使いようがなく、使えば脆弱性が付いてくるSGXは廃止が早々に決まっていた。

SGXは脆弱性の沼にハマっており、現状ではソフトウェアで軽減は出来ても完全な脆弱性回避は出来ていないはず。だから攻撃が見つかるとファームアップが必要になり、インテルにとって維持コストが高いだけになっていた。

<Alder Lakeはようやく仕切り直しに>

ちなみに、Alder LakeではGPUが第12世代(Xeの後の世代)になり、CPUは8+8の構成になる見込みである。これは、昨年末頃から出ていた噂である。
8+8とはARMのGTS(big.LITTLE)構成のように大コア(Golden Cove Micro-Architecture)と小コア(Atom系こちらは次世代か現世代か確定していない)を1つのプロセッサーノードとしてクラスタリングさせるものだ。これを使うと、平均実効性能辺りの消費電力が大きく下がることが期待される。
しかし、AVX-512を維持したままだと、このコア数を10nmで達成するのは難しいということや、発熱の問題が出てしまい、ダークシリコンが増えることを懸念して外す選択に踏み切ったのかもしれない。いや、AVX-512を外すことが先に決まって、これが決まった可能性も無きにしも非ずだ。

それでも、今のところ予定されていると噂される最上位製品はTDP 125Wライン(i9クラスかな)になる予定で、その下が80~85Wになるのではないかとされているので、Bigコアでさえも、高クロックでの動作は漏れ電流が多い恐れがあり、ARMの電力効率ほど良いものになるかは分からず、Bigコアのクロックが上がらず、思った程ではないという可能性もある。

ただ、仕切り直しの最初の製品になるのは間違いない。

これはたぶんSkylakeで失敗し、機能拡張しすぎて投入できなかったCannon Lakeの反省を生かして作った最初の製品と言うことになるのだろうと思われる。以前からIntelがそれを修正しているという情報は出ていたが、それがやっと準備出来たということだ。性能が上がるかどうかはともかくとして、これがちゃんと今Intel内にあると思われる計画通りに出るかどうかが重要になる。

もちろん、これが出ても厳しい状況なのにはかわりがない。何せこれは、10nmの製品群だからだ。この10nmは他社で言えば、大体7nmに近いが露光にArFを使っている訳で、この製品が、順調にいって来年投入だとEUVベースのTMSCやSamsungにバッチリと抜かれていて、Intelにとっての7nm(2021年後半の予定)が立ち上がらない事には、負け戦に突入する可能性が大となる。少なくとも今年は既にIntelは先端プロセスにおいて、他社の先端は少しリードしているはずで、来年は他社が5nm(IntelのEUV-7nm相当)に入りそれが開くのだから……。

それもあって、使われない機能を削ぐことを急いだとしたら辻褄は合う。AVX-512に使う命令ポートの役割を減らし、トランジスタ数が減らせる要素でもあるなら、その分を別に回すことが出来るならば、効率を引き上げることも不可能ではないからだ。本当に、これまでは他を圧倒する技術の進歩で、無駄にスペースを使ってあまり使わない部分を搭載しても、十分だったが、それが出来なくなった数年で、その方針は続けられないと悟り、ご飯粒の一つも残さず、爪に火をともすぐらいの努力に切り替えたのかもしれない。


尚、Alder Lakeはパッケージサイズも今までより巨大になる見込みだ。まあ、大きくすればコア数はいくらでも増やせるが、一方で歩留まり(生産コスト/欠陥率)は悪くなる。Intelが性能に自信を持つ場合は、価格が高くなるかも知れない。逆にAMDが力強い性能でリードしていれば、Intelにとっては利幅が減るかもしれない。


まあ、ここ数年のIntelは期待通りの製品を出しているとは言い難い。あくまで、サーバーやモバイルでまだ他よりマシな製品があるというだけだったり、商品ラインナップ数(在庫の数を含む)の差でIntelが選ばれるという状況だ。それを次こそ変えると言われても、信用は出来ない。ただ、AVX2までに戻して命令セットの多くを整理していく流れがやっと明確になるとしたら、Alder Lakeか、その次辺りが良い品になるかもしれない。まあ、Alder Lakeの次となる7nm版のGolden Coveがそれほど待たずに出るならそっちの方が良いかも知れない。

はっくさま

検索の件も含めて、補足して頂き、ありがとうございます。

>前に記事になってた久しぶりのインテル外付けGPUの件も関係あるのかも。

DG1-SDVは当初予定では今年中(9月以降に発表かな?)ボード製品出荷が開始される予定ですけど、実際にベクトル演算をするなら、今のところはGPGPUの方が高速ですから、確かにその可能性も高いと思われます。

ただ、Alder Lakeがサポートを外すとしてもまだ3つシナリオが

1.今後全ての製品でAVX-512を廃止する。
2.サーバーワークステーション(E/EP/EX/SP)では当分残しつつ機能拡張を探る。
3.実は7nmでは復活させるつもり。

3番目は大穴ですけど、Intelが元々言っていた話では、プロセスノードに対して載せている技術が進みすぎていたという体でしたから、あくまで10nmだけ諦めて、7nmでAVX4みたいな名称でGPUと重なる効率の悪い部分だけを捨てたり、良さげな命令を仕切り直して出してくる可能性もあるかもしれません。











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この記事へのコメント

はっく
2020年07月14日 11:56
いまやGPGPUの計算力がバカにならなくなってますもんね。計算力が上がるにしたがって電力消費(=発熱)もバカにならない問題ですが。

前に記事になってた久しぶりのインテル外付けGPUの件も関係あるのかも。
める
2020年08月01日 15:39
IntelはAVX512だけでなく掃いて捨てるほどある大量の命令をどうにかして(´・_・`)
愛読者
2020年09月27日 09:29
まぁそもそもAVX-512の源流となったLarrabee拡張命令の頃から、この命令セットは色々と曰く付きだったような気がします。PC向けでない命令拡張、しかも「AVXとは異なる独自の」拡張ということで、当時PC Watchの記事で後藤氏が「x86の鬼っ子的な存在になりかねない」というコメントをしていたのが未だに記憶に残っています。

そして、今回のCoveシリーズが一つの転換点になると思うのですが、個人的には、やはり16Way以上のベクタ拡張を従来のSSE/AVXの延長で行うのは無理があった、ということだと思います。加えて、マイクロアーキテクチャの思想とも絡む部分ですが、Zen2が多コア化の流れを作った現在、256ビット演算器×16コアと、512ビット演算器×8コアで、どちらの方が総合的に良いのか?という選択も出てくるので、単純な512ビット化は(製造プロセスがより進んで諸々の問題が解消されたとしても)難しいように思います。