「Ryzen 9 3950X」のベンチマーク解禁……だけど、ここは第4世代Ryzen Zen3の話と、Intelの話。

Ryzen 9 3950Xのベンチマーク記事が解禁されたようだ。ゲーミングではチューニング差があるため、まだIntelが多少強いものも残っているが概ね3950Xとの差は購入動機から外すほどではなく、むしろIntel最適化のアプリケーションで、誤差に近い水準まで詰め、開発やビジネスアプリケーションソフトでは総じて3950Xが上回っていることを見ると、最強はAMDに完全交代したと見て良い。


まあ、この追い抜きが過去と異なるのは、最初にIntelをx86でぶっちぎったAthlon(K7)の時には、デスクトップやパフォーマンス市場がPCの中心だったが、今はラップトップ(ノート)やモバイルといった小型端末が販売の過半数を握っていることだろう。Intelにとってはそれが救いとなっている。

但し、パフォーマンス市場でトップを獲得したAMDの評価が悪い訳では無い。このプロセッサ技術を使うサーバー向けのEYPCは順調に販売を伸ばしているようで、生産が追いついてないとも言われるほどだ。また、GPU内蔵のモバイル向けUシリーズはZen+でZen2よりランクが下であるにも関わらず、好調に売れているという。MicrosoftがSurfaceシリーズに採用したのも良い例だ。これらから、この市場を獲得したことは確実にブランド価値の向上に寄与している。


では、AMDはこの先もこの競争力を維持できるのだろうか?それについて書こうと思う。

<2020年に登場するAMD Zen3 Micro-Architecture>

AMDは来年Zen3と呼ばれる新しいマイクロアーキテクチャを投入する。これは、第2世代の7nmプロセスルールを採用したものである。
半導体の回路パターンの設計に使う露光技術に波長が極めて短いEUV(Extreme ultraviolet/極端紫外線)を使う製品である。現在はArF Excimer Laser(Argon fluoride laser/アルゴンフッ化エキシマレーザー)が採用されているが、これの波長はEUVより長いため、より細かく繊細な筋を引くのが難しい。要は、画力の差がないと仮定すると0.5mmのシャープペンシルで2cmの用紙に画(絵)を書くのと、0.3mmのシャープペンシルで画を書いた方がより細かく美しく描けるのと同じだと思えば良い。

ちなみに、どれほどの効果があるかというと、ArFでの描画解像度は最大で38-40nmのピッチとされる。それに対して、EUVでは最高12~14nm前後、初期のレベルでも30nm以下のピッチで正確に回路パターンを成形できる。即ち、最大2.7倍正確性が増すのだ。
これによって、一部描ききれなかった(小さく書けなかった回路)が綺麗に整列するようになるため、トランジスタ数や回路の量をさらに増やすことが出来る。また、電力の漏れ(leakage)を減らすことにも繋がる。

この技術は、元々7nmでは必須とされていた技術だったが、売り文句として付けた部分も大きい。今の初期型7nmはIntelで言えば10nmクラス程度(今のIntel世代も当初より少し後退していると言われる)だからだ。そのため、本当のところで言えば、EUVの7nm+が当初の7nmに近いと考えた方が妥当である。


では、Zen3はZen2に比べてどれほど性能が上がる見込みなのか?
今のところではZen2より1割から高くて2割のIPC(クロックあたりの実効性能)が上がると考えられているが、どうやってそこまで性能を引き上げるのかは、まだ定かではない。コア数を増やすことはパフォーマンスなら18~20ぐらいまで増やせるかも知れないが、EYPCでは流石に今後は行いにくいほどにコア数も増えており、たぶん最適な方法ではないだろう。

今のところ予想されているのは、SMT(Simultaneous Multi-Threading/Intel Hyper-Threadingなどで使われる仮想マルチスレッド技術)を今の2倍サイクルから4倍サイクルにする方法だとされる。SMTx4はx86では使われていないが、PowerやSPARCでは現在または過去に使われており、Powerはx8まで存在する。これだと、少ない回路リソースでより多くのスレッドを扱うことが出来、マルチスレッディングプログラムが当たり前の今では、トレードオフは殆どない。強いて言えば、プロセッサーの処理サイクルが大幅に上がるため、熱密度が上がりやすいという点だけだ。回路技術が優秀ならそれもそう左折できるだろう。

これに伴いデコーダーユニット等を2つのクラスタ構成にする可能性はある。その昔AMD steamrollerが行っていた技術だ。あれは、2つのALUクラスタを採用していたが、FPUが共有で性能が上がらなかった。今回は今の構成のままで命令ポートを今よりさらに少しばかり増やせば、1サイクルで4スレッドの発行は可能だろう。これだと、1割程度の回路増で数パーセント~1割ぐらい最大性能を押し上げることが出来ると予想できる。

命令セットではAVX-512Fを搭載するかだが、実装はできるだろうが価値はいまのところあまりないと考えられる。電力パフォーマンスを考えると、AVX-512FのようなAVX2を置き換えるものは既にオーバースペック(CPUに搭載してもあまり実用性がない状態)であることが見えている。512系に含まれている命令のうちのいくつかを、摘まんでいく可能性はあるだろう。

残りはキャッシュ周りの強化に向くと考えられる。EUVを採用しても熱密度は確実に上がり、それを下げるためのダークシリコンは必ず出る。キャッシュ部を上手く配置することで、それを抑えるのは今や当たり前であろう。まあ、AMDはキャッシュ部分に手を入れることが多いので、今回も増やす可能性がある。

こういう手法で1割~2割性能を押し上げると考えられる。


ちなみに、Intelは来年にもWillow Cove(Tiger Lake) をデスクトップ向けにも投入する見込みである。Ice Lakeの高クロック化に失敗しているので、満足いくクロック数で出てくるかが課題になるが、これもIce LakeよりさらにIPC性能を上げているという話も出ている。もし、それが事実ならば今のCoffee LakeやComet Lakeと同じぐらいの周波数を出すことが出来れば、AMDを再び追い抜くことが出来ると考えられる。ただ、そこまで今のIntelに期待するのは避けた方が良いだろう。

まあ、IPCがComet Lake比25%~30%の向上に対して、10~20%ぐらいクロックを落としたぐらいの割合で凄さを示すとかそんなところなら、Zen3とちょうど競えて、少し上回るぐらいがIntelの狙っているところかもしれない。その予想を大きく超えてくれば凄いが、2010年頃から考えれば、5年10nmは遅れている。そう考えると、期待値を高く取ることは出来ない。



上記のように考えると、今後IntelとAMDは良い勝負を繰り広げていくだろう。AMDはZen4の開発にも過去に触れており、自信を持っていたことから、今後も性能は上がっていくと思われる。一方で、Intelは10nmで周波数さえ上がればAMDを追い越すことも可能だ。
ただ、今のところ簡単には言っておらず、Tiger Lakeも7nm予定から10nmに名称変更しているあたり、いろいろ苦労しているのだろう。
まあ、今のIntelはCPUが厳しくとも、XeなどのGPU開発での自信や、iGPU内蔵のモバイルでの優位性はむしろ一頃のAMDより高まっている。そこが、売れ筋である今、Intelはある意味では時代にあった製品を出しているとも言える。

そして、Intelは3D XPointのようなストレージでもAMDとは異なる。CPUの足かせは、メモリーやストレージであることを考えると、Intelは特にサーバー市場でのシェアを今後も維持できると同時に、業績面でもそれらが支え始めている。そう考えると、Intelは10nmの遅れのお陰で、AMDやnVIDIAなどのGPUやCPUだけのメーカーよりいち早く、半導体での多角化を果たして安定しつつあるとも言えるのかも知れない。

少なくとも、10nmが立ち上がらないからといって焦るほどの状況でもなくなっているのは間違いないだろう。





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