三菱重工、BombardierのCRJ事業買収交渉……成立するか?

昨日の日経新聞社の記事である。これは、三菱重工業が目指しているのが保守事業だけということであって、ボンバルディアが売りたいのが果たしてそれなのか?それとも……というところだろう。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45725330V00C19A6TJ1000/


個人的な意見で言えば、カナダのBombardier, Inc.が持つBombardier Aerospace(ボンバルディアエアロスペース)からAirbusに供給(パートナーシップという形で供給)している事業以外を引き受けることでボンバルは交渉している可能性が高い。

尚、ボンバルディアのC Seriesは、現在A220と改称して販売している。

<MRJは飛び立てるか?>

ちなみに、ボンバルディア本体は既に、航空機に力を入れていない。
昨年は、プロペラ機事業(ターボプロップ機事業)をViking Airに売却しており、ナローボディーのC Seriesもエアバス(Airbus、Airbus SE)に移っている今、残りのCRJ事業も売却先を探していたと思われる。そこに、三菱重工との権利問題が出たことで、交渉が始まったのだろう。

ある意味では、権利問題(特許侵害訴訟)はこのために仕掛けられたのかもしれない。

ちなみに、Bombardier, Inc.の主力事業は、Aerospaceの他にTransportation(輸送機関事業、主に公共交通鉄道車両の製造保守、鉄道網保線などの事業も含む)がある。こちらが今や本業になっており、航空機事業は、むしろ処分したいのだと思われる。

利益が多少出ていても、大きな利益を生み出さないなら売却し、主力事業への投資にその資金を投じた方が良いという判断である。日本企業が結構嫌う判断である。


それを、MRJが買収するかどうかが今問われている訳だ。

CRJ関連はとても業績が良いわけではない。黒字ではあるが、成長性はそれほどないのだ。ただ、三菱重工や三菱航空機が持つMRJがそれに加われば、化ける可能性もある。(まあ、ここで化けるならMRJ単体でもいけるという見方も出来る。これは後述する。)
CRJ事業にMRJが加わればその顧客がその航空機を買ってくれる可能性があるだけでなく、CRJで培った技術を元にナローボーディを目指すMRJ2や3も短期間でそつなく製品化出来る可能性があるからだ。(しかし、それは三菱航空機が求めているものではないかもしれない。だから、保守事業だけで調整しているのかもしれない。)

また、ボンバルディアとしても製造拠点の一つに日本が入るのは魅力的だろう。何故なら今製造拠点となっている米国は、中国と貿易摩擦による関税競争真っ盛りである。上手くすれば、その影響を減らすことも出来るかも知れない。(これも重工が欲しいものとは限らない)

後は、買収に掛かるコストが三菱航空機にとって妥当と判断出来る額かどうかである。

正直、今はまだ金融面では好景気な時期で、特に米国にある事業などは買収コストが上がる傾向にある。株価もここ数ヶ月下げも見られるが、全体として下がっているわけではない。今後の景況感を考えると、今買うのが高く買って銭失いというパターンも有り得るのだ。ただ、今買わないとチャンスがないかもしれない。

即ち、完全な買収ではなくAirbusのように出資という形で合弁出資という形になったり、買収しないという判断も有り得るだろう。


<買収すれば、買収しなければ……どちらでも課題はある>

旅客機はこれからも需要が増えるのか?というのは何とも言えない。MRJが期待した未来は少なくともやって来ていないからだ。実はMRJが当初予定していた100席未満の航空機需要は、今後減退する可能性が高いとみられている。一方で、100~150席ぐらいの航空機はまだ需要が伸びる。

だから、MRJは既にMRJ2という100席オーバーの航空機も設計開発に入っているはずなのだ。(一度明言しているので、機体の製造はしていなくとも設計図は引いているだろう)

ここで大事なのは、買収によって一度に必要な技術を喰らうのが良いのか?それとも、当初は赤字でも、全く何もない状況から、一つ一つステップアップした方が良いのかという未来の見方だ。前者なら、たぶん取り込めばすぐに何らかの効果が出るだろうが、一方で事業規模が一気に大きくなるので、成長するにはエンブラエルからシェアを奪取する必要がある。保守部門だけを喰らうにしても、結局管理費やライバルとの新しい部分での競争は加速する。


一方で、独力の場合に苦しいのは、MRJがまだ引き渡しにこぎ着けていないことにある。そのため、事業資金(運転資金)を補填し続けなければいけないのが、最大の問題点だ。但し、製品が出荷され始めると、事故でも起きない限り、後はシェアを奪い続けるだけという形になる。燃費競争も他の航空機メーカーと同じ座席数で比較すれば、特別悪い状況にはない。だから、実際に引き渡しが始まれば、受注数が大きく増え始めるかも知れない。

こちらの方がある意味では、小さな事からコツコツ改善を重ねていけば、長く成長できるだろう。もちろん、引き渡しが始まる前に資金がショートするリスク(賛同企業が離脱する危険)や、始まった後にBoeingの737MAX8ようなトラブルがあれば、1つしかないのが仇になるケースもあるにはある。最初の方で書いた理由も大きいだろうが……。


<自信があるなら買収はしないが……ボンバルが抜け目ない>

まあ、一つだけ確かなことは、その市場で確実に成長出来る自信がある企業が、同じ業種で買収をすることはないということだ。何故なら、買収すると今の自分がやっている事業への投資を買収に回すことになるため、その強みを失うことがあるからだ。

分かり易く言えば、独力でAという商品を作っている企業が、A商品で成長し、その後に出したBという商品でさらに加速度的に成長する。そうなると、開発中のCやDに投資してさらにシェアを伸ばすのが普通だ。

しかし、そこで、その市場で故山のX社を買収する。するとシェアは取れる。古くからのノウハウや顧客も獲得できる。結構これを市場で過剰評価する人もいるが、それをやるとCとDへの投資が細り、むしろX社の古い柵(利益率の低い製造ライン)などが徒となって弱ることも結構ある。

日本が、海外買収で過去に失敗してきた例の中にはそういうmajica(マジか)という失墜も結構ある。
だから、成長していてこれだけで確実に取れる優良な企業は、市場を取れている間は買収をしない。

逆に占有率が上がり、成長期期待がない場合や、新規事業を行う足がかりとして買収することが多い。


MRJはどちらかというと新規参入になる。ただ、全く出荷実績が無い中では、今のところそれなりに受注は取れて(遅れているのに受注解除件数はそれほどなく維持できて)おり、本当にどっちが良いのか難しい。単独でやっても、製品の引き渡しが始まれば、受注が増える可能性は高い。結局、この100席以下クラスで目立った競合は出てこなかったからだと思われる。

ただ、ボンバルディアと双方で特許侵害訴訟を起こしているからというのが、先に書いたMRJの方はまだ1機体も顧客に航空機を納入していないことに掛かってくる。そこが、ある意味では、ボンバルの法律家や経営者が策士だった可能性をあるわけだ。ニヤリと笑っているかも知れない。

まあ、買収すればもう三菱航空機や三菱重工は航空機事業から足を洗うことが暫くは出来なくなるだろう。
日本産旅客航空機をという夢は必ず果たされる。しかし、一方でその先の未来がこれらの企業にとって予想される通りのバラ色の未来になるかは、見通し難くもある。何より、日本で製造して、海外に売るという流れでは無く、ボンバルの保守ラインの一部を製造ラインに変えて、海外でという流れも加速する可能性が高い。


短期的には間違いなく検討できるだけのよい話である。ただ、買収した場合には、中長期では買収の成果が出てくるか、重しとなるかは、買収した後のビジョンを買収までに(買収後でも良いが、買収した後にボンバルディアにいた人間に示せなければ厳しくなる)見いだせるかどうかという新たな課題は出てくるだろう。


<寡占市場での買収案件はその後が厄介>

まあ、三菱重工は火発事業で日立と統合し三菱日立パワーシステムズ(Mitsubishi Hitachi Power Systems , Ltd.)を作ったが、今、他の同業種とともに業界全体の市場縮小で苦しんでいる。統合してシェアを稼ぎ大きくなっても、結局全体のパイが減れば、また小さくしなければならない。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44583840Z00C19A5TJ2000/

寡占市場で一気に寡占化の一角(巨人の一つ)になるということは、そういうことが避けて通れないのだ。
MRJはその寡占市場に挑み、切り崩すはずだったが、それがまだ出来ていない上に、訴訟でも足を引っ張られている。そこから交渉が始まっているとしたら、この買収案件は、買収後からが結構厄介かも知れない。









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