事実上、営業停止に向かいそうなHuawei、ARMがIP供給停止へ。

英BBCのニュースでARMがHuaweiへのライセンス供与停止を社員に打診したという報道が出た。これで、Huawei傘下のHiSiliconは同社が開発しているSoC Kirinの新規開発が出来なくなる見込みである。

Kirinの中核(CPU)にはARMのCortex-AシリーズのIPを採用しているため、これで事実上Huaweiは自社ブランドのプロセッサ開発も出来なくなる恐れが強い。OS云々の問題では既に無くなってしまった。
https://www.bbc.com/news/technology-48363772


<ビジネスマンには怖い話>

この問題はまだHuaweiという中国企業の話だから、ヤッターとかいう人もいるだろうが、現実は日本への影響もかなりデカい。少なくとも、ソニーのCMOSセンサー、村田製作所のRF信号変換コンデンサ、TDK傘下にあるinvensenseのセンサー(ジャイロ、コンパスなど)事業はHuawei並に買い付けをしてくれる事業者が見つからないと、業績が悪化する恐れがある。

いや、今回ARMがこれを発表したことで、ソフトバンクグループも影響を受けたことになるわけだ。また、Panasonicや日本電産なども影響が来る可能性が高い。

米国では、Intel、MS、Xilinx、Google、Broadcomが既に影響を受けると考えられており、Texas Instrumentsなどの事業者にも今後影響が出てくるかも知れない。韓国では、SamsungやLGが影響を受けるだろう。

世界No2がどれほど市場に食い込んでいるかは分からないが、いわゆる経済効果という言葉に代表される延べ利益は、1兆円企業なら、世界で数倍~10倍の金額になる。Huaweiは第1四半期で3兆円を超える売上げがあるわけで、その低く見積もった場合で3倍※の市場影響があると仮定したとして、これで営業停止に追い込まれると年間で30兆円ほどの経済下押しが発生する。

もちろん、Huaweiの代わりに成長する企業もあるだろうが、その全てを代替企業が賄うことはない。Huaweiは元々性能の割に安さもあったので、その投資規模で考えると、ワンランク質の下がった安いものが選ばれる可能性が高く、サプライヤーからすれば、下押しにしかならない可能性が高い。


※通常は最終メーカーの売上げ高より4.5倍~7倍、高付加価値だけで組み合わせ利益を少なめにしているものだと10倍に達する物もある。

即ち、このままこの問題を解決できなければ、経済が落ち込むことを覚悟した方が良いということになる。例え、トランプ大統領が、交渉は上手く行きそうだと言っても……今の米国は、基本的に景気が予想以上に悪くなりそうだと思うと、平気で交渉は上手く行っていると嘯く傾向がある。それで、一時凌ぎをして、実際は何も進展していないことが多いのだ。そして、徐々に不透明感が増していくのが今のセオリーである。

これは、イギリスのブレグジット問題も同じだ。問題を先送りし続ければ、いつか好転すると思っているのだろうが、この状況で果たして中国は折れるのかとか、EUが折れるのかというと難しいだろう。

むしろ、レアアースの米国への輸出を中国が止めるか削減するのではないかという憶測も出はじめている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-05-20/PRT4386JIJUR01


これが行われると、本当に体力勝負どころか、周りを皆巻き込んで自滅パターンだろう。


<これで中国は折れるのか?>

というと、難しいだろう。正直、中国から米国の大学に行き、勉強して米国企業に就職し今回離職して中国に戻る優秀な人材は増えているようだ。そのため、今例え経済が世界で一番良いのが米国でも、5年後を見た時に、今の政策が結果的に優秀な人材の漏出に繋がっている可能性は高い。

そういう見方を中国政府がしていると考えるなら、経済指標に対してある程度調整を掛けてでも、耐え抜く覚悟をするだろう。元々中国は共産国家で、社会国家である。だから、言論や経済に対する考えの方向性を一方に向けるのは比較的簡単だ。

習政権やプーチン政権は、トランプ氏のように目先の支持率を求めて動いている訳では無い。トランプ氏は、支持率が下がりそうになると、すぐに嘯き、1週間もするとそのメッキが剥がれることが多いが……(最初は半年ぐらいあったが、最近は短いサイクルである)。彼らは、嘯く時にもそれに長い目線の理由がある。

これは、プロが指す将棋や囲碁と素人が打つものの違いに似ている。今週の株価を上げるために、上手く行っていると言えば、確かに今週はあがる。しかし、来週その結果が物別れなら下がる。利下げをすれば、確かにお金は回るので、金融市場は喜ぶ。しかし、物価が上がっているなかで、利下げを続ければ、商品市況や為替市況が悪化すると同時に、一般労働階級の生活費が増してしまい景気は腰折れする。

その状況で中央銀行の利率が低いと、利下げによる経済のカンフル効果は無くなるため、日本で言う失われた20年のようになりかねない。まあ、MMTという10年前なら絶対に否定されていた理論が今の米国では通る時代だ。

これらは、結局、景気は上がり続ける方が良いという短絡な発想と、2008年のリーマンショックのような恐怖が起きては困るという過度な反応から出ている現象だと思われる。

ただ、景気循環を考えると、これをずっと続けるほど次に下落するときの谷が深くなるだろう。


中国やロシアはそういう部分を理解しているからこそ、表舞台の駆け引きと裏の駆け引きを、今でも使い分け微妙な舵取りを続けてきたが、少なくとも米国とイギリスはそれが既に出来ていない。

だから、中国も折れるつもりがないのだろう。どうせ追加関税も発動されるのだ。最悪の関税が発動してから、考えた方がジリジリやられるよりよっぽど短期間で終わるからだ。しかも、これは米消費者に必ず痛手がやってくることも見透かされている。
https://jp.reuters.com/article/mnuchina-china-tariff-idJPKCN1SS1XH

今の米大統領やその側近には短期的な支持率以外のビジョンはないことが既に見え見えなのだ。
どの国も既にそれを見越しているのである。

ただ、それに巻き込まれる企業とそこで働く労働者は、苦しい。


<Huaweiはどうなる?>

Huaweiの未来は分からない。ただ、ZTEも破綻はしていないので、Huaweiも破綻までは追い込まれないだろうと思う。もし、追い込まれるようだと、むしろ世界経済がそこからおかしくなる可能性もあるからだ。
だから、破綻はさせないだろう。逆に言えば、これは目に見えるからこそ破綻までは行かないようにする訳だ。最悪でも、資産がある間に解散だろう。

世界でNo1、No2、No3というシェアをいくつもの事業で持つ会社が潰れると、金融危機を起こした2008年のリーマンショック級にそれが発端で繋がってもおかしくないからだ。楽観視する人も結構居るが、サブプライム問題も楽観視していたら、ガクンと突然やって来て、それが過去の最悪などと言われた。

前回は不適切な格付けを高格付けに混ぜていたことから端を発したが、こういう不況は同じ事象からは起きず、楽観視している予想しないものから起きることが多い。次に来るのはたぶん政治発端で政治で直接起こしている事とは別の見えない部分での、業績悪化が起き、予想してもいない場所から、破綻や困窮の話が出てから始まる。

だからHuaweiからは何も起きないと思われる。

怖いのは、サプライヤーや取引金融機関などへの影響がどれほどあるかだ。そして、取引先の先やそのもっと先に、致命傷が隠れている可能性もある。


ただ、確かな事はやはり次の経済危機は必ず政治(保護主義などの考え方、ナショナリズムの発想)から始まる選択の失敗が、引き金になるだろうと言うことだけだ。






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