Windows 10 ARMは期待外れか!?救世主か?

ほぼARM版Windowsの情報は出そろった。特に、以下のPC Watchの記事とASCIIの記事は面白い物だった。
これを元に考えると、Windows10のバイナリー互換はx86(IA-64/Itaniumで開発した)エミュレーションレイヤーを流用したようだ。だから、IntelがQualcommに対して特許侵害だと言ったのだろう。

ただ、提訴に踏み切っていないのは、MicrosoftがOSの設計をしているだけで、Qualcommがタッチしているという事実が無かったからかもしれない。今後、Intelも提訴するかもしれないが。

マイクロソフトは、バイナリーの共同開発者であるため、設計は出来る。Qualcommにはその権利がないという主張だったのだ。まあ、x86-64(x64)までやると、AMDからもそういう話が出る可能性がある上に、そもそもx86のレイヤーはあっても、64のレイヤーはない。それ向けに設計するとなると、相当なリソースを必要とする上に、今もx64レイヤーは変化を続けている……即ち相当な労力が予想される。

だから、Windows NT3.51までと同じように、ARMv8-A向けのコンパイラを用意して、別立てにする方針だったと思われる。これまで濁してきたのは、販売前からこれの情報が出れば、ARM版普及の足かせとなりかねず、成功しない恐れが強いからだとすれば、納得出来る。
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/ubiq/1095498.html
http://ascii.jp/elem/000/001/596/1596735/

<期待外れと救世主のボーダー>

問題は、これを期待外れとみるか、救世主とみるかだろう……日本で総じて多いのは、期待外れ論である。何故期待外れなのか?と何故救世主なのか?それらは、求める機能や能力が人それぞれに違うからだが、期待が少し少ないのは、戦略的なものと費用効果の問題がある。それを具体的に書いていく。

-CPUの性能折り込み-

少し前に、ベンチマークのデータが出てその記事を書いたが、ARM系は元々RISCベースのプロセッサである。Acorn RISC Machine改め(最初の略称)、Advanced RISC Machine(現在の略称)として登場したのがARMだ。最近はArm(ソフトバンクグループになったからか?は分からないが、今年に入ってから増えた)と書かれるようにもなったが、基本的には今でもARMと書かれることが多いのは、元々がただのブランドネーム(例えばPentiumのようなもの)ではなく、技術の頭文字だからである。

今、x86/64も内部構造はRISC風になっているが、これは命令発行本数を早めるために、先に処理するコード分解(確認/デコード)し最適化するためだ。ARMでもその手の機能があるが、x86のそれほど複雑ではない。それは本当にシンプルに纏まった命令セットしか備えず、その代わりシンプルだからこそ処理工程が少なく素直に処理が終わる。

そのため、x86の複雑なALU/FPU演算と同等のことをさせると、得手不得手が出てくる訳だ。ベンチマークでは総合的な数字上は高い性能を出しても、個別に見ると、一定の落差が出てくる、それが実用性能を押し下げる。

エミュレーションレイヤーはそれをなるべく起こさないようにしているものの、ARMv8系のアーキテクチャは、苦手な処理を基本的にGPUやハードウェアアクセラレータに分散し、コアはよく使う汎用命令を追加するスタイルに留めているのもあり、結果的にx86の実行時には性能が伸びにくい。重いという意見と、きびきび動くという2つの試験実用評価が出てくるのは、もしかするとその得手不得手がアプリケーション毎に表れるからかもしれない。

即ちx86向けの実用では、スマホの最初からx86で設計されたプロセッサのように、このクロックでこのベンチマークの総合結果だから、だいたいこれぐらいの性能でこのアプリケーションは動くだろうという予測は成り立ちにくい。x86でもAMDとIntelでは得手不得手があるが、それよりエミュレーションを使い異なるアーキテクチャにコード置き換えを行うARMは、顕著にそれが出てくる。ARMが苦手とする演算が多いアプリケーションでは遅くなるため、遅いと言われるケースが出てくる。


Sanpdragon 845を使ったとしても、果たしてCore i3を追い抜けるかは微妙だ。何せ、Core i3は既にx86アプリケーションではそれなりに多用されているAVX(第1世代以降)を実装し、同じクロックなら、Atomの2倍近い性能を発揮するからだ。その分SSE(AVX)ポート利用時の平均電力も3倍~4倍になる。即ちパフォーマンスに対するワットコストは1.5倍~2倍である。だから、AtomはAVXを搭載していないとも言える。

まあ、開発を続けていれば、実装できたかもしれないが、実装すればCore製品群をAtomが脅かしたことだろう。

話が逸れたが、この辺りを先に予測していた人は、だいたいここで評価を落とすことはないが、これをもっと高性能になると思っていた人は落胆する。これがまず一点だが、結構この部分を問題視する人も多かった。まあ、それだけ、スマホの性能評価のように見ていた人が多かったのだろう。

ちなみに、ARM系のアプリをOS上でx86向けにエミュレーションする場合は、性能があまり落ちない。これは、x86の方が複雑な命令処理系を持っているからである。その代わり、消費電力はARMより大きくなる。だから、スマホではx86の消費電力の大きさが徒となり普及しない。


-Windows10 S-

期待外れと思う人が最も多くなる要因は、ここだろう。私はここにガッカリした。こいつらお試しで出したな……としか思えなかったからだ。これは、正直致命的だと私は思っている。少なくとも最初の製品はProで投入すべきだっただろう。

これを選択した理由は、コストイメージと互換性だろう。SoCのCPU性能はAtom以上のCeleronクラスである。その割に価格はAtomより高い。ここでProOS(Homeは現時点では、選択肢になかったと思われる)を載せると、100ドルは跳ね上がる。だから、抑えたという点が一つ。

もう一つは、先に挙げたx64の互換性がないことだろう。そのため、率先してProで登場させるのは憚られたのだと思われる。下手に、Proで登場させればサポートは、x64アプリをインストール出来ないという苦情に対応しなければいけないからだ。Proにアップグレードしたなら、それはMicrosoftに丸投げできるという打算もあると考えると、Sが一番よい。

もう一つは、果たして売れるのか?保守サポートは続くのかというのもある。ARM版のWindowsはRT、CE、Phone、Mobileなどで苦い歴史を重ねている。最も最近のものは、Mobileで機能の大幅な更新は既にしない見込みである。この状況で、ARM Windowsを選ぶ人がどこまでいるか?は分からない。だから、反応を見て、最初からProを望む声が多いなら、それを出そうと考えている可能性は高いが、それが逆にやる気の無さにも見えてくるから……期待値が下がる。

卵が先かニワトリが先かという状況である。


-バッテリーの持ちと、SoC機能-

その中で唯一高評価を受けるのは、バッテリーの持続時間だろう。これは、本当に予想以上の高さといえる。ここだけを切り取って評価する人には、かなり購買意欲が出てくる製品である。
また、GNSSの内蔵、LTE/3Gセルラー回線対応などの機能が、ビジネスマン等から見れば評価出来る機能になるかもしれない。CLIDEやTE10を持っている身から言えるのは、これらの製品はドライバチューニングが製品筐体毎に個別に行われていてリファレンスドライバーが使えないケースが多いという問題がある。フィーチャーアップデートで使えなくなる内蔵機器などを見ると、馬鹿らしい。

しかし、これがSoCになればそれに統合されているものに関して、基本的なドライバチューニングは不要になるだろう。モビリティーという点で見れば、かなり今後の可能性が高い。
ただ、これを評価する人は、一定数はいても……大多数ではない。そこが、今回の救世主と考える人の少なさに直結する。後は、製品がどこまで安くなるか、最終的にどれぐらい製品をだすメーカーが増加するかなどの面が、重要になりそうだ。

まあ、個人的にはIntelがAtomを継続し、セルラー機能や、GNSSセンサー機能を一体化したSoCをCPU・Atom x7 Z87x0ベース(のUFSストレージ対応)で設計してくれれば、それで十分だと思うが……一体化すればそれらが別の製品より、周辺デバイスの電源供給が減るので、あと数十分~数時間はバッテリー持続時間を延ばせるはずなのだから。


<高い評価を得るには……>

今後、ARM版Windows10が高い評価を得るには、まずはCPU性能を押し上げつつ、バッテリの持ちなどをアピールしていくことになりそうだ。さらに、Snapdragon 835に関しては価格をもう少し抑えないと、沢山売るには結構苦労するかもしれない。Windows10 Sが標準というのもちょっとマイナスポイントだ。

しかし、これだけで高い評価を得られるとは限らない。もう一つ重大な要素として、Intelが開発中止したAtomプロセッサの後継を本当に作らないのか?ということがどうしても残る。そもそも、Intelが中止したのはモバイル向けとデスクトップ向けのAtom後継製品であるが、これらは、PCと競合してしまっていたから廃止された面もある。

しかし、ARM版のSoC統合PCが売れるなら、IntelもXMM無線チップと、GNSSセンサー、さらにAtom系に相当するプロセッサを内蔵した製品を出してきてもおかしくはない。特にARM系のプロセッサが、x64サポートを断念する可能性がある中で、逆大手を掛けることが出来るのは、IntelやAMDの方かもしれないのだ。

そういう、少し微妙な立ち位置にARM版Windowsは立たされていて、今後成長するのか、それともやっぱりダメだったと言われるのか?見えないのが現状だろう。


これは個人的な印象だが、Windows10 Sモデルがベースになるとは思っていなかったので、ここが大きなマイナスになっている。それがなければ、値段がもう少し高くても、それなりによい評価を得たのでは無いかと私は思う。
予想以上に安いなと思って見ていくと、Windows 10 S搭載だったときには、流石に開いた口がふさがらない程には、驚いた。(ちなみに、前回も書いたがASUSはWindows 10SからProへのアップグレードが無償であると明記されている。しかしHPはまだ正式な情報はない。PC Watchによると有料っぽい。)

これがなければ、救世主と評価する人はもっと多かっただろう。後は、x64バイナリー対応が、行われない流れが徐々に出てきているのが、心配な点だ。これは、Windowsを使う者達にとっては、選ばない理由の代名詞になる可能性が残るからだ。


<WindowsはWintelの呪縛を超えられるか?>

ARM版のWindows10は本当にマイクロソフトが普及させたいのかどうかがよく分からない。ただ、カスタマーの要望でやっているだけなら、きっとその気はないか、上手く行けば続ければいいかなぐらいかもしれない。そうやって、RTやら何やらを出してきたように見えるから、これの見極めは本当に重要だ。

私の目で、現状を見ると……「上手く行けば続けよっかな~」ぐらに見える。
x64はブラウザ、動画編集ソフト、ゲーム、一部業務用ビジネスソフトの移管において最近、徐々に浸透している中で、この辺りには未だに言及せず、事実上PC系サイトから漏れ出す形で、無さそうだという既成事実を生み出しているからだ。

ARM版のコンパイラが登場すればブラウザなどはすぐに対応する。それなら最初からそれを宣言して、発売時点でARMv8版ブラウザぐらいは準備しておいた方が、もう少しマシだったという結論にいたる可能性もある。いや、その前にx86は動くけど、x64のネイティブソフトウェアは動かないのでARM版をというのは、IA-64のトラウマが思い起こされる。そう結局はマイクロソフトもWintel(ウィンテル)と歩いたそれを諦められないのかもしれない。

このように考えると、Wintelの呪縛は本当に呪いのようだ。そして、RTやWindows 10 Mobile、Phoneなどをこれまで、短期間にブランドチェンジし、サポートやアップグレードを諦めた製品のイメージ(怨霊)がここに来てARM版Windowsに重くのしかかっているように見える。少なくとも、これをちゃんと出すつもりだったなら、Windows 10 Mobileはこれが製品として登場して、ある程度評価を終えるまで、後継の開発をしないだろうと宣言しなければならなかったようにも思えるし、他にもいろいろ悪手がある。

マイクロソフトはOS事業においては、インテルやAMDとの関係を超えると、途端に初動や、中長期のサポート視点、ビジョンが「へっぽこ」で「ヘタレ」になる。ARMをx86以上に普及させるかどうかは別としても、最初の最初、初動ぐらいは、インセンティブをある程度出してでも、ARMブランドのWindowsを支えて、我々はやるんだと見せつけるべきだった。

ARMがこれからのWindowsの一翼を担うと思わせるなら、Mobile版とデスクトップの両刀があると見せた方が、ポイントは大きかったからだ。


まあ、今はそれを匂わせているが、数年後、恋人のIntelや友人のAMDを振り向かせる(SoC版のAtomを作らせ貢がせる)ためだけの、戦略だったということもあり得る訳だが……何せ、x86陣営がx86ベースでしっかり10nm~7nm世代でSoCを投入すれば、バッテリーの持続時間は、ARMよりも短くなるがある程度形になりそうなのだから……。


<JA2DHC様>

コメントありがとうございます。
JA2DHCさんは、10月の終わりにも、MediaTekの関連記事でコメントされていた方でしょうか?
かるろすさんや、wakeさん、とおりすがりさんなどなど、他にも沢山のコメントを戴いているのですけど……返せなくてごめんなさい。って、ここで書いても意味ないかもしれませんけど、この場を借りて御礼申し上げます。


SoC関連の記事は、最近になってようやくImpressやASCIIなどが詳しく記事を書くようになりましたけど、それまではあまり記事にはなっていませんでしたから、それを見ていて、スペックが分からないなと思って取り上げたのがきっかけです。ただ、最近は非公開情報が多くて……。

まあ、そういうのもあって当日に最新の情報を出せるとは限りませんけど。
当Blogが続く限りはSoC情報を頑張りたいと思います。



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この記事へのコメント

JA2DHC
2017年12月08日 13:00
2ヶ月ほど前に、SoC関係の記事を探していてこのブログにたどり着きました。
初めてスマホを買うに当たり、昨年来、どれが良いか物色していてメディアテック社のSoCを使ったスマホに将来性を感じていました。Helio X30採用のスマホに期待していましたが、MEIZU社の一品種だけの採用でガッカリしています。来春にはHelio P30が出るので期待して待っています。

Atom Z8300採用のWin10 PCを2台持っていますので、今日の投稿は興味深く読むことができました。これからもSoC関係の最近情報をお願い致します。

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