東芝が富士通とPC事業合弁交渉・・・また始まった短絡的な合弁交渉

業績が悪化して初めて、親会社同士が同意する恋愛関係は、うまくいかない。これは企業版「恋の吊り橋効果」である。恋愛において異常な興奮や事件などにおいてカップルになった場合、その恋愛における関係は長続きしない。これは、いわゆる休戦協定のようなものだ。A国とB国が争っていて、突然C国がその隙を突いてA国とB国の領土に侵攻してきたとしよう。A国とB国は当然だが、C国と戦うことになるが、A国とB国で争っていたらC国には勝てない。だから、一緒になってC国と戦おうとする。当座の目的が一致するときに、例え昔から関係が悪い相手同士でも、一時的な仲良しこよしが生まれることがある。しかし、元々ライバルや敵だったもの同士が、一時的な状況の悪化から、仲良くしてもお互いの相性が合うとは限らない。それが、恋の吊り橋効果である。

企業も同じで、短絡的な利害関係で、合弁や合併をすると失敗することは多々ある。特に、業績が悪い場合に分社合併するときは、エルピーダやルネサスのような結末になることが多い。シャープの鴻海との関係なども似ている。日本の雇われ経営者(経営者というよりはサラリーマンに近い)が、最も間違いやすい経営戦略である。

<本当に綺麗な合併をするなら、少なくとも1年は裏で交渉されている>

今回の話は、東芝、富士通だけでなく間に日本産業パートナーズが入り、VAIOも含まれる可能性がある。東芝と富士通は関係性としては元々ハードディスク事業やスマートフォン事業などで合弁や事業買収・売却をしてきた関係があり、まああり得ると言える。しかし、富士通が分社する予定のPC事業は、携帯とは別事業の予定であり、しかも100%子会社として分社する予定である。(私は、この方法を大いに嫌っているが・・・)そのため、東芝と合弁にすれば、かなりがんじがらめになり親会社2社(またはどちらか一方)がべっとり絡むのは目に見えている。

情けないことに、富士通と東芝の大きな買収合弁関係でうまくいったものはあまりない。ハードディスク事業の東芝への譲渡は結局ハードディスク事業が赤字、富士通の東芝スマートフォン事業買収は現在赤字である。そもそも東芝が力をもっていたREGZA Phoneは富士通になって廃止されArrowsになったが、東芝の頃より質が低下している。富士通が元々もっていたラクラクシリーズが、支えているようなものである。この2社は自分たちではうまくいっていると思っているのかもしれないが、可能性がある駄目な事業を押しつけ合って、さらに駄目にしている面も見られる。

だから、安易にこの交渉を進めれば、また5年10年後に赤字になり二進も三進もいかなくなるのは目に見えている。そもそも、事業を絞った分社で親会社が事業の範囲を限定し、親会社と競合する事業開発を避けるやり方をすると、たいていの会社は弱っていく。シャープの産業革新機構によるJDIとの再建もそうだが、特化して分社すれば強くなると本気で思っているのが既に前時代的なのだ。それが通じるなら、マイクロソフトがSurfaceを発売することはない。DellはEMCを買収しないし、IntelがMcAfeeなどのソフトウェア事業や、アルテラを買収したりはしない。本当に、自社では再建は難しいと思うなら、さっさと欲しがる会社に売却した方が、社員のためにもなるだろう。(日本のためとかそういう話をしていたら、少しずつ社員が減り、どんどん衰えていく。)

ちなみに、日本産業パートナーズが出しているであろうVAIOによる2社事業吸収は、なかなか面白い。これは、簡単に言えばVAIOの経営が日本産業パートナーズが予想した以上に悪いのだろう。たぶん、VAIO Phoneの失敗が響いていることと、ソニーの出資比率が5%とかなり低く、今後ソニーによる支援は望めないことも影響していると思われる。結果的に、VAIOは製品サイクルが低下しており、シェアが下降を続けるという悪い状況なのだ。このままだと、産業パートナーズにとっては負である。だから、東芝と富士通に乗っかり、出資比率を下げ、リスクを分散したいのだ。さらに、東芝や富士通の製造ラインとブランドまで食えれば、かなり財務と運営は安定する。海外事業で富士通は欧州(縮小傾向)が、東芝はかなり縮小したがアジアや米国など諸外国があるのも大きい。その代わり、経営権はVAIOが握り、OEM/ODMで東芝や富士通に供給することも考えているのかもしれない。

まあ、もしODMやOEMで存続会社VAIOにし、出資比率は産業パートナーズが3割から4割、東芝と富士通が3割とした場合、VAIOはAndroidスマホの販売も出来るだろうし、さらに富士通と競合するエンタープライズに参入することも可能かもしれない。これは一つの手段として面白い。しかし、これも結局は、吊り橋効果なのだ。産業パートナーズは最終的にVAIOの株式を高値で売り抜けるだろう。そのための事業再建ファンド(投資会社)である。だから、中長期ではあまり見てない。

結果的に、短絡的な合意を交わし、事業範囲がVAIO株式会社として分社したときより、狭くなる可能性も秘めている。最後の親に富士通や東芝だけが残ったりすれば・・・やっぱり、ハードディスクやスマホの二の舞になるかもしれない。

<本当に会社を再建し利益を得たいなら、活用してくれる成長企業との交渉を進めるべし>

私自身が思うに、本当にVAIOに価値があるなら、MCJ(マウスコンピュータなど)やサードウェーブ(ドスパラ)辺りと交渉した方が、うまくVAIOブランドを使ってくれるような気がするが・・・スマートフォンを開発するようなこれらのBTO企業は、VAIOのような海外でも通じるブランド力は、魅力的なはずだ。日本では、大きな企業は対等で大きな企業が買収すべきと言う発想が根強くある。

しかし、そもそも大きな企業同士が要らない(赤字)事業をくっつけても、最終的に要らない部分をそぎ落とすことしか出来ない。それを、成長の可能性を秘めた企業が下にいて、そこに譲ってバックから支援した方が大きく化ける可能性もある。賭と言えばかけだが、どちらにしても事業が縮小されるなら、大きくしたいと思っている会社に譲った方が、賭は成功する可能性が高いのだ。

日本では、どうも対等な関係同士でのやりとりと、大が小を飲み込む形が多いが、小が中や大を飲んで、イノベーションが起きることも世界では多々あるのだ。東芝と富士通の話もそうだが、大きい者同士で赤字事業をくっつけるなら、いっそPC事業(に限らず、スマホなどのコンピュータ関連)に参入したい企業があるなら、そういう企業を探した方が、活用してくれるかもしれない。などと考える。

まあ、まだ決まっている話ではないと思うが、こういう噂が出ると、結構進んでいるケースも多い。特に東芝は、既に市場からの自由な資金調達が不能になってもおかしくないほどの不祥事を起こしており、現在はその見極めをする期間にある。そのため、なるべく「悪い事業をそぎ落としておかなければいけない」という焦りもあるはずだ。だから、これ以外にもこの手の交渉は出てくる可能性が高い。

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